第1話 壁(30p)

 その姿は壁で全く見えないが、この声は恐らくはサングラスの女性だろう。

「心先生、何です?」

 サングラスの女性は落ち着いた声で言った。

「お茶を二人分持って来て下さい。カヌレも一緒にお願いします」

「心先生、かしこまりました。吉永様、砂糖とミルクはお付けしますか? レモンも御座いますが……」

 サングラスの女性にそう問われて、私は少し迷って、「じゃあ、レモンだけ、お願いします」と答えた。

「心先生はストレートでよろしいですか?」

 サングラスの女性……白鳥さんがそう言うと、今西先生はうーん、と声を上げて、「僕もレモンを付けて下さい」と言った。

「かしこまりました」

 白鳥さんは、そう言うと、診察室から出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る