第1話 壁(29p)

「そうです、お茶です。今、調度、三時なんです。お茶の時間ですよ。カヌレが有るんです。お茶も、買ったばかりの物が……紅茶、お好きですか? ディンブラなんですが……」

「すっ……好きです。ダージリンとか、アッサムとか……」

 私が答えると、ダージリンにアッサム、と今西先生は呟いた。

 壁が有るので、先生がどんな顔をしているのか分からなかったけれど、困った様な声色だったので、「ディンブラも好きです」と私は慌て言った。

「本当ですか? 良かった。いやぁ、すみません。ダージリンもアッサムも今切らしているんです。今、運ばせますから。白鳥さぁーん!」

 今西先生が大きな声でそう言うと、ノックの音の後、診察室の扉が開き、「失礼致します」と言って誰かが入って来た。

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