第1話 壁(28p)

 初めは、自分以外の人にも壁は見えているのだと思っていた。

 けど、違ったのだ。

 誰しも、壁を感じているのかも知れない。

 しかし、見えてはいないのだ。

 心の壁は目には見えない物なのだ。

 じゃあ、この壁は?

 私に見えているこの壁は何なのか!

 おかしい!

 私だけに、どうして……。

 私は壁を、私と先生との間に有る壁をジッと見た。

 壁……壁が見えている。

 壁が有る相手に、一体どうやって話したら良い?

 どうしたら……。


「吉永様、お茶にしませんか?」

「おっ……お茶ぁ?」

 私は、ポカンとして、頭の悪そうな間の抜けた声を上げた。

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