第1話 壁(22p)

しかし、もし、目の事で、特別話したい事があるなら、特殊な状況に有る様なら、話しだけして頂いても結構です。秘主義務が有りますので、外部に話しが漏れる事は有りません。話しだけでも、していきませんか?」

 その瞬間、私は、彼の、先生の、その優し気な声に反応して、勝手に口を動かしてた。

「助けて下さい!」

 私は、そう叫んでいた。

「壁が! 壁が見えるんです! 助けて! 助けて下さい!」

 私は、そう言いながら泣いていた。

 今まで我慢していた感情がドッと流れ出た。

 初めて会う人の前で泣いたりして、恥ずかしいと思うのに、涙が止まらない。

 ああっ、私は泣くのを我慢出来ない程、参っていたのだ。

 私の様子に驚いたのか、オロオロした声で壁越しに声がする。

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