第1話 壁(20p)

「はい。全く問題有りません。視力も、その他も、問題無い様ですが、少し目の乾きが有りますので、今日は乾き止めの目薬を処方させて頂きます。しばらくその目薬を使って頂いて、様子を見て頂く様になりますが……疲れ目の症状も有る様子ですし、お望みでしたら、疲れ目の症状に効果の有る目薬の方をお出し致しましょうか?」

 壁越しに先生はそう言った。

 またか……。

 私は心底ガッカリした。

 今日は、相手を良く見ようと頑張った。

 だから、目も疲れているだろうし、乾いてもいるだろう。

 ここもダメだ!

 何をしても、何処へ行っても私の目は良くなりはしない。

 壁は無くならないのだ。

「吉永様、目薬はどうされますか?」

「乾き止めの目薬で良いです。有り難う御座いました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る