第1話 壁(19p)

「吉永様。これから検査をしますので……簡単な検査ですのでご安心下さい。岡谷(おかや)さん!」

 彼がそう言うと、誰かが部屋に入って来た。

 その声でパステルブルーのナース服の女性だと知れた。

 ナース服の女性と私の間にも壁が有る。

 彼女の姿は壁で隠れ、もう全く見る事が出来ない。

「吉永様。私が検査を担当させて頂きます。検査室へご案内しますので、こちらへどうぞ」

 私は、そう言う彼女の後に黙って続いた。

 検査室に案内され、視力検査や眼底、眼圧検査というのをやり、乾き止めの目薬をさされて、診察室に戻された。


「あの、先生? 私の目はどうですか? 大丈夫ですか?」

 椅子に腰掛け、私は壁越しに問い掛けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る