第1話 壁(17p)

 今西(心)……と書いて有る。


「吉永貴子様ですね。本院でお書き頂いた問診票では疲れ目で目が見えにくいと有りますが……詳しく伺えますか?」

「はい。目に疲れを感じるんです。何だかぼんやりして、見るのが疲れるんです。最近では頭痛も感じる様になって、もうずっと目を閉じていたい様な……とにかく見るのが疲れるんです」

 私は、今までも散々繰り返して来た言葉を口にした。

「その症状は、いつ頃から感じ始めましたか?」

「もう、ずっと前からです」

「……そうですか。では、目の状態を確認させて頂きます。顎を上に向けて、目をパチッと開けて下さい」

 私が言われた通りにすると、彼は私の目を覗き込んだ様だった。

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