第1話 壁(12p)

「あの、すみません。私、今日受診予定の……」

『吉永貴子様ですね。少々お待ち下さい』

 そう言われた後にドアからカチャリと鍵が開く音がした。

『どうぞお入り下さい』

 そう言ったきり、インターフォンから声は聞えなくなる。

 私は言われた通りにする事にして、ドアノブをくるりと回した。

 ドアの先は六畳程の広さの部屋だった。

 大理石だろうか? ツルツルした白色の石の床、壁は赤い布製の壁紙が貼られていて、白く塗られた木製の小さな靴箱と立派な鉢に植えられた観葉植物が一鉢置いてある。

 正面に黒い観音開きのドアが見える。

 そのドアが開き、髪をショートボブにした、背の高い、サングラスを掛けた女性が現われた。

 彼女は私に丁寧にお辞儀をすると「良くお越し下さいました。こちらのスリッパに履き替えてお上がり下さい。靴はその靴箱に」

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