第1話 壁(5p)
塾帰りの私に声を掛けて来たのがマドモアゼル・ヘラだった。
「そこのアナタ! そうよ! アナタよ! こっちに来なさいな。アナタ、悩みがあるでしょう! アタシにはわかるわ!」
そう言いながら手招きで私を呼び寄せるとマドモアゼル・ヘラは私の手を取り、私の手のひらをジッと見つめると、「貴方、目が疲れているみたいだけど、このままだと失明の恐れがあるわよ」と不吉な事を言い、メモにサラサラと何か書き私に渡した。
メモには今西眼科医院の住所と電話番号が書かれていた。
マドモアゼル・ヘラは目の事は眼科へ行くのが一番よと言うと、私に占いの相談料三千円を払う様に要求した。
私は言われるままに三千円払い、そして気がつけば今西眼科医院の門を潜っていたのだった。
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