第1話 壁(4p)

 私は腹を決めると靴を脱ぎ、今西眼科医院と金色の字で印刷されている青いスリッパに履き替え、受付の女性に初診である事を伝え、保険証を診察券、保険証と書かれた箱へ入れた。

 受付の女性は問診票とペンを私に渡し、書くように言う。

 待合室の長椅子に座り問診票を埋め、提出し、しばらく待っていると「吉永さぁん、吉永貴子さぁんー」と呼ばれた。

 吉永貴子(よしながきこ)、私の名前だ。

「吉永さん。初診と言う事ですが、当院はどの様にして知りましたか?」

「あの、マドモアゼル・ヘラさんの紹介で……」

「まっ……マドモアゼル?」

「えっと……あのっ、占い師の」

「ああっ! 竹山様ね」

 竹山なんて名前に心当たりは無かったが、恐らく占い師マドモアゼル・ヘラの本名だろう。

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