第1話 壁(3p)
この寂れた建物が今西眼科医院だった。
四角い鉄骨の建物。
灰色の外壁には蔦が生い茂り、先程から一羽のカラスが剥製の様にピクリとも動かず、建物に取り付けられている今西眼科医院と書かれた汚れた看板に止まっている。
私は本当にここに来て良かったのか不安に駆られた。
入口の扉を開けて中に入ると閑古鳥とはこの事か、どう見ても流行っている様には見えない。
広い待合室には誰一人いなかった。
薄暗く、静まり返った院内。
私が踵を返し、帰ろうとすると、「こんにちは」と声がした。
声がする方を振り返ると受付窓口と書かれたプレートが貼られたカウンターに人影が見える。
茶色い髪を一つに束ねた、黒ぶち眼鏡の若い女性がニコニコしながら私を見ている。
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