第4話 二度目の出会い③


 一瞬、彼女の言った意味が理解できなかった。


「死んでる」


 彼女は確かにそう言った。

 人は生きることでその存在を示し、生きているからこそそこにいる。

 しかし彼女はそれを真っ向から、正々堂々、包み隠さず、否定したのだ。

 その否定は、彼女が幽霊であると遠回しに言っているようだった。


「えっと、死んでるっていうのは?」


「そのままの意味です」


「つまり君は幽霊だと……」


「はい」


 正直信じられなかった。いきなり現れた初対面の人に幽霊だなんて言われても、信じろというほうが無理な話だ。

 しかしその反面、辻褄が合う部分もあった。

 まず、この部屋にどう入ったかということ。玄関も窓も全て鍵がかけてあって侵入することは不可能だったはず。

 それから、僕の記憶にこの子がいないということも。


 僕の頭の中を様々な疑問がぐるぐる回る。


 しかしそれは、気持ち悪いものではなく、むしろ心地いい気もした。


 真っ白で空っぽだった頭の中を、物足りなかったこの気持ちを、満たしてくれるような気がした。それが勘違いだとしてもいいと思った。


 根拠はないけど……


「わかった。信じるよ」


「え?」


「君が幽霊だってこと。信じるって言ってるんだ」


「え、あ、ありがとうございます。でも、なんで……?」


「……なんとなく」


「そう、ですか」




 彼女が少し、微笑んだように見えた。

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