第2話 二度目の出会い①


 家に入ってから違和感に気づくまで、そう時間はかからなかった。


 リビングの方で物音がしたからだ。

 13時。母さんも父さんも帰ってくるには早すぎる。

 だとしたら、誰がいるんだ。空き巣……?

 いや、でも、うちに盗るものなんて何も……


 足音がしないよう、廊下をそっと歩く。

 抜き足差し足忍び足。これじゃどっちが泥棒だかわからないな。

 廊下がいつもより長く感じる。

 やっと辿り着いた冷たいドアノブに手をかけ、中を覗ける程度の隙間を作る。


 いつも通りの部屋。テーブル、ソファ、棚、何も変わりない。

 しかし、決定的に違うものが一つ。いや、一人。

 それは、少女は、ソファに腰を掛けていた。まっすぐ伸びた黒髪を下げ、小柄な体をゆらゆらと揺らしている。

 空き巣……にしては幼いというか、似合わないというか。ゆっくりしすぎというか。

 とりあえず警察呼ぶべきか?

 考えているうちに手が滑る。手のひらから離れたドアノブは元の位置に戻ろうと反発し、鈍い音とともに床と水平になった。


「やべっ」


 僕の声に反応したのか、ドアノブの音に反応したのか、少女は体を硬直させてゆっくり振り向く。


「お、お邪魔してます」


 引きつった顔で少女が言った。


「いえ、ゆっくりしていってください」


 引きつった顔で僕も言った。

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