第11話 やばい工房

「お気をつけてー。」

 お客さんを見送り、軽く伸びをする。

「お久しぶり。中々に繁盛しているようね。」

 不意に後ろから声が聞こえる。振り向くとサリフィアがいた。

「はい、お久しぶりです!今日は依頼ですか?」

「いいえ、お話でもと思いまして。父さまがいてはまともに会話出来ませんもの。」

 どうやら暇ならしい。

「でも俺は何を話せばいいか・・・」

「ふふ、無理しなくてもいいですわ。それと今から・・・お互い敬語は禁止ね。」

 と、悪戯な笑顔を浮かべる。

「さて、何から話そうかな・・・?そうだ、実はわたしの友達が今度誕生日でパーティーを開くことになってるけど、一緒に参加しない?」

「唐突、だな。・・・でもせっかくだけど行かない。いくらサリフィアとは知り合いといっても、その人からは他人な訳だし。」

「あぁ、その辺は大丈夫よ?直ぐに知り合いになるはずだから。」

 再び悪戯な笑みを浮かべる。いやーな予感が・・・。

「ふはは!頼もう!!なんてなぁっ!客が来たぞ!」

 嫌な予感的中。金髪で黒いタキシードに漆黒のマントを着けたハイテンションな青年が扉を勢い良く開けて入って来た。


「ふ、申し遅れたな。私はドライヴ・ルク・メルティニス、ヴァンパイアだ。」

 堂々と人外発言したなー。

「そしてぇ!我が自慢で愛しの妹、クリュンだっ!!」

 シスコンかよ。ドライヴさんが仰々しく横へ避けると、朱色のフリルや模様の入った漆黒のドレスを着た輝くような金髪の美少女がいた。

「クリュン・カラ・メルティニスです。兄のことはあまり気にしないで下さいね。」

 と、ドレスのスカート部の端と端を摘まんで丁寧なお辞儀をする。この人は常識人みたいだな。

「この工房の主のシン・ハザキです。ドライヴさんは今回どのような用件でしょうか?」

 とりあえずお客さんと名乗ったので何様か聞く。

「ほぉ?ヴァンパイアと名乗ったにも関わらず、動じないどころか笑顔で対応してくるとはな。気に入ったぞ。」

 あぁ、気に入られた・・・。クリュンさん、そんな哀れみの目で見ないで下さい。サリフィアは楽しそうな目で見ないでくれ。

「シンと言ったな。私に敬語など無用。呼び捨てで構わない。して、今回の要件だが簡単なことだ。この度誕生日を迎える我が愛しの妹に、護身用の剣を打ってほしいのだ!なに、サリフィアから剣の話を聞いてな、貴公ならば出来ると見越しての話だ。どうだ?前金代わりとして我が吸血鬼の血200mlで如何かな?」

 何吸血鬼の血って?!

「兄様、シン様を困らせてはダメです。申し訳ありませんシン様、兄はわたくし関連で決めたことは決して曲げない方なのです。わたくしからもお願いします。」

「いやまぁ、鍛冶師として断る理由なんてありませんし、打ちますよ。で、どんな形状にしてほしいとか希望はあるかい、ドライヴ?」

「ああ、形状等その辺りは任せよう。では、そうだな、特殊効果として血液を剣事態に吸収出来る力を与えてほしい。」

「つまり斬りつけた相手に怪我を与え同時に血液を奪えるようにしたい、と?」

 拳に力が入る。もう割り切っただろう・・・落ち着けよ俺。

「ふ、いい表情かおだ。まあその解釈で構わない。だが、言ったろう?護身の剣がほしいと。気持ち程度の効果で構わん。」

「わかり・・・わかった。そのようにしておく。とりあえず料金は・・・金貨3枚だ。」

「え、3枚ですか?」

 とクリュンさんが驚き、

「安いでしょう?わたしの剣も金貨3枚なのよ?」

 サリフィアが答える。

「その割には良い出来だな。素人目にもわかるぞ。では、金貨3枚だ。受け取れ。」

 そう言って金貨3枚を手渡される。

「では、期待しているぞ。クリュン、おまえはシンと話でもしてのんびり帰って来るといい。シンよ!我が大切な妹の話し相手になるのだ!ではな。」

 ドライヴはそれだけ言うと無数の蝙蝠になってどこかへ消えた。

 しかし、魔王の娘と吸血鬼兄妹の来る工房とかやばいなぁ~ここ。

「頼もう~!なんてね。シンー、遊びに来たよ~?あ、まだお客さんいたや、失礼。」

 ミリカまで来た。頭いてぇ。

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