第10話 エトランジェたち

「あなたは一体誰なんです!」

 無意識で肩に力が入る。しかし返ってきた反応は、

「えぇ?!あてずっぽうでふざけていったのに!?ていうか日本人に見えなっ!」

 である。それはそうだろう。転生したから顔の形やら体格とか若干違う。ほぼ変わっていないが。しかし髪の色は濃紺、目の色も薄い水色では日本人にはとても見えまい。・・・って、あてずっぽうかい!!

「そっちこそ日本人ないし外国人にすら見えないんだが?」

「だってしてこっちの世界に来たんだもん。見た目だって変ったっておかしくないでしょう?」

「転生だと!?君も転生してきてたのか!」

「うん!なんか一緒の世界から来た人がいるってだけでうれしい!あ、自己紹介まだだった!わたしミリカ・ハシ・・・じゃなくて、橋岡はしおか 視理華みりか!」

「俺は葉咲 芯。シンでいいさ。」

 そうして互いに自身がこの世界に転生した理由やら夢やらを話し合いながら、包丁や鍋など品物を見てもらった。因みに俺より二つ年上だった。


「そんなとんでもスキルがあるんなら冒険すればいいのに~。わたしだってその時はついてくよぉ?」

 さっきからこんな調子で俺をダンジョンに連れて行きたがっている。正直いい迷惑である。

「いや、さっきから言っているが俺は鍛冶仕事をやれれば十分なんだ。わざわざ危険を冒してまでレアアイテムは求めていない。」

「んもぅ~、シンってば連れないなぁー。」

 と、やっと諦めてくれた。ていうか拗ねた。

「・・・まぁ、どうしてもダンジョンへ行かなくちゃならん時は頼むことにするわ。」

「あ!フラグ成立!うん、その時は手伝うねっ!」

 やめてください。死んでしまいます。

「さて、たくさん買っちゃった。今日はありがと。」

 と、荷物を下げる。ミリカは包丁と鍋を買いに来たが、他にも銀製のスプーンやフォーク、アルミニウム製のハサミやステンレスのボウル、泡立て器を買ってくれた。

「あぁ、お買い上げ、ありがとうございます。」

「今まで旅してたけど、中々いい街だし、しばらく住むことにするね。その時ご近所さんには質の良い金属製の食器を売ってるって口コミしとくね。」

「お!それはありがたいね。そん時は頼むわ。」

「うん!エトランジェどうし仲良くしよ♪」

「エトランジェ?」

「あぁ、フランス語で異邦人って意味だよ。この厨二な世界にはぴったしと思わない?」

「思わない。」

「あはは、バイバーイ。また今度♪」

 久々に楽しい時間を過ごすことが出来たな。しかし、エトランジェか。ミリカは俺と会うまでどんな生活をしてきたのだろうか。・・・さて、商品が減った分つくるとするかな。

 それから2週間後、俺の工房には主婦が食器を買いに来るようになった。

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