第9話 謝りたくて
2日後、午前中の内にサリフィアはやって来た。・・・魔王こと父親に首輪を着けて。まるでサーカスの調教師だ。それにしても前回まさに化け物といった見た目だった魔王だが、今は大きな角を生やしマントを羽織った、いかにも魔族といった見た目になっている。シュール。
「いらっしゃいませ!ご注文の品は出来上がってますよ。」
「えぇ、ありがとうございます。早速剣がみたいわ。」
と、ニコッと微笑む。
「はい、こちらです。気を付けてください、剣身は常に帯電していますので。お気に召さなければ、無料で打ち直しますので。」
と、剣を出す。
「・・・綺麗」
銀をベースに打ち、鍔にはサファイアをあしらう。その剣身は細く、細剣と呼ばれるものだ。鞘も銀をベースにし、絶縁の効果を付与している。
「気に入りましたわ。こちらが代金になります。」
と、ざっと見て1千枚はある金貨袋が渡される。因みに、この世界は金貨1枚あれば一か月は遊んで暮らせる。割に合わん・・・。
「い、いけませんよこんな大金!受け取れません!金貨一枚で十分です!」
と、断ると今まで黙っていた魔王がふいに、
「貴様っ!我が娘の慈悲を受け取れんというのか!?首をへし折られたいかっ!!」
なんて怒り出した。
「父さま、黙って。ややこしくなる。」
そう言って細剣の剣身を魔王の額に当てる。そうすることで、
バチバチバチバチバチバチ・・・
「いだだだだだだだだだ!」
魔王に電流が流れ続ける。楽しそうとも満足そうともとれる表情でサリフィアは電流を流し続ける。
「ひょっとしてそういう使い方したかったわけじゃないですよね?」
「えぇ、こういう使い方をしたかったの。暴走する父さまに毎回魔力を使うのは、勿体ないもの。」
サリフィアは悪戯な笑みを浮かべる。俺は唯々項垂れた。
「それでは、失礼致します。しかし、本当に金貨3枚でよろしかったのですか?」
俺は結局金貨2枚でと言ったのだが、前金を忘れていたからと一枚追加され、仕方なく了承した。
「はい、構いません。俺はいいものが打てたから十分満足なんですよ。」
サリフィアはそれを聞いて納得したのか、「また今度お会いしましょう」と丁寧なお辞儀をして去って行った。
しかし、オーダーメイドの武器、広告に堂々とお断りと書いたのにつくってしまったな。あの時を思い出して、勢いでグレイダードさんに失礼なことを言ってしまった。謝ろう・・・、そしてなんでそんなに武器をつくりたくなかったかという訳を言おう。
目を
『芯、これが刀、日本刀と呼ばれる昔の武器だよ。かっこいいだろ~?』
・・・今でも聞こえる。父さんの声が。
『パパ?シンちゃんにそんな危ない物を見せないの。模造刀でも危険なのよ?』
・・・母さんの呆れ顔が頭に浮かぶ。
『動くんじゃねぇぞっ!!動けばガキが可哀相なことになるぜぇっ!?』
そしてあいつの顔!!!それで・・・それで!!
『ボウズ伏せろっ!!しゃがめーーーっ!!!』
「アガッ?!ハァ・・・ッ!ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・」
過呼吸寸前になりながら大量の汗を噴き出し膝から崩れ落ちる。
こんなんでちゃんと話せるのだろうか。いや、話さなければ。俺は本当は刀剣が好きなんだ。いつまでもあの日を引きずっててはいけない。決めたじゃないか!刀匠になるって!!
トントンッ
「すいませーん。やってますかー?」
外からノックの音と女性の声が聞こえる。お客さんだろうか?何にせよ、こんな汗まみれの顔は失礼だ。
「はーいいらっしゃいませ、少々お待ちください。」
手ぬぐいで顔を拭いて扉を開ける。
「おぉ~、やってた!チラシを見てここに来ました!包丁と鍋って売ってますか!?」
「はい、ありますよ!こちらへどうぞ!」
はじめて広告役に立った!っと広告も作り直さなきゃな。とりあえず物販室へお連れしよっっと。
「あぁ、それとあなたって、日本人だったりしますか?」
「!?」
驚きのあまり反射的に女性を見てしまう。歳は俺と同じくらいに見える。しかし、赤い髪の毛と右目が黄色、左目が灰色のオッドアイという見た目からして日本人どころか外国人ですらないであろう。この人は一体なんなんだ・・・?!
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