第8話 ハーモニカの詩人

 仕上がった剣の剣先に触れる。

 バチィッ

 まるで静電気が流れたかのような感覚が襲い、反射的に手を引っ込める。まぁ最も、静電気の比ではないほど痛いが。

「仕方ない、絶縁質の鞘をサービスするかな」

 剣自体に電撃を纏わせるのは失敗したなと思い、打ち直すことも考えたが、この剣以上の出来になる剣が出来なさそうなので鞘に絶縁質を使用することにする。

「♪♪~♪♪♪~・・・♪♪~♪♪♪~・・・」

 そんなことを考えていると、不意に遠くからハーモニカの音が聞こえてくる。こっちの世界にもハーモニカと似たような楽器があるんだなと思っていると、音が近づいてくることに気づく。

「♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪、♪~♪~♪♪♪♪~・・・」

「いい曲ですね。」

 ついつい外に出て感嘆の言葉を言うと、その人はハーモニカに似た楽器を止め、こちらを見る。旅の詩人といったところか。

「あぁ、おはようさん。いい曲だろ?だがな、俺が作曲したわけじゃないんだ。」

 青年が笑顔で言う。

「そうなんですか?どなたが作曲したんですか?良ければ聞かせてください。」

「あぁ、構わないさ。この曲は俺と同じ旅人が教えてくれた曲でさ、お互い似た楽器を持っていたのが縁で仲良くなったんだ。それで、故郷に伝わる曲をって教えてくれたのさ。」

 と、ハーモニカを見せる。

「そいつの曲が一番凄いって俺は思うけど、あいつとんでもなく強かったんだ。なんせ城よりもデカい魔物が出たことがあったんだが、同じくらいの大きさになって、一人で、すぐに倒しちまった。あいつなら、もしかしたら魔王すら倒せるんじゃないかな。」

 と、興奮ぎみに言う。この世界怖いな。て言うかあの魔王だったらこの人でも倒せるんじゃないかな?

「俺がそう言ったら、「俺はこの世界の者に干渉する気はない。」ってさ。勿体ないよな?」そう話を振られるが、それどころではない。俺とおなじく、異世界から来た人だったのか。

「本当ですね、でも、俺も興味が湧いてきました!どこにいそうかわかりますか?」

 同じ世界から来たのか知りたい。

「残念だが分からない。だけどあいつ不思議な剣を持ってたな。あんた、鍛治師だろう?もしかしたら直してほしいって現れるかもな。」

 俺の前に来るかもしれない。それだけで十分だ。

「そうなんですか。でも、いつか会えたらいいな。ありがとうございました!いろんなお話を聞かせていただいて。」

「いや、構わないさ。大したことはしていない。さて、日が昇りきるまでに、街の中心部まで行くかな。じゃあな!」

 そう言って俺の工房を後にし、再びあの曲が聴こえる。俺も鞘をつくるかな。

 俺はしばらくハーモニカの奏でる曲を聴きながら、作業に戻った。

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