第6話 不思議な少女

「すみません。俺の店では武器はつくらないことにしているので。」

 この子の目、何か凄みがある。我が祖国でいうゴスロリファッションをしているが、只者ではないそんな雰囲気をかもしている。だが、そんなことに怯まない。俺は人殺しの道具はつくらない。

「・・・そう、残念ね。・・・!失礼、そこに掛かっている包丁を見せて頂けないかしら。」

 これは鍛冶スキルの実験で使った包丁・・・。特殊効果を付与する実験をして成功。付与効果は、耐久度上昇・ナマクラ。

「・・・うん。これを頂けるかしら?」

「えっ!?それを!?」

 驚いた。まさか武器として使えそうなものならなんでもいいのか!?

「クスッ。えぇ、この切れ味の悪さがいいわ。わたくしの望みに適している。」

 付与された効果を見るには効果判定のスキルを持っているか、専用の魔道具がないとわからない。そしてスキルは通常自身の身体に適しているものしか発現できないことをグレイダードさんから教わっている。この子は付与された効果が見えている、しかし、ナマクラなのがいい?ではなぜ最初剣を求めたんだ?

「えっと、その、よければナマクラであることの何がよかったのか、教えて頂けませんでしょうか?」

 そして返ってきた答えに驚かされる。

「・・・そうね、?」


「・・・殺さないため・・・?」

「クスッ。驚いて当然ですわね。『武器として意味をなさない武器』を求めているのだから。」

 そうじゃない。俺が目指すものを、この子は求めているのだ。ならすることは、

「申し訳ありませんが、その包丁はお売りできません。」

「あら、これもダメなのね。残念。」

「いえ、違います。その包丁は試作品で、お売りできるようなものではないのです。」

「それでは・・・!」

「つくらせてください。不殺の剣を!」

 少女は目を見開いた。そして微笑む。


「そう、ならお願いがあるの。特殊効果を指定することは出来るかしら?」

「出来る範囲ならば。」

「ありがとう。付与して頂きたいのはナマクラ、そして電撃ですわ。」

 え?電撃?なぜに・・・

「電撃できないことはないですが、どのくらいの威力でしょうか?」

「あら、そうでしたわね。このくらいの威力でお願いします。」

 そういって俺の手を・・・取り・・・ってこれ!

 バリバリバリバリッ

「あびゃびゃびゃっやばばばば~らららららぁーっ!!!!!!!」

「っ!!いけない!ごめんなさい!!つい癖でやっちゃった!!!」

 俺は床で転げまわる。痛い!これで死ぬ奴はいないだろうけどちょーいてぇ!!なにが癖だよ!素かよ!?怖いわ!!

 突然だがこの世界、詠唱しなければ魔法はほとんど威力を発揮しないか、発動そのものがしない。詠唱には魔法名だけ唱える短文詠唱と厨二語を唱え魔法名を唱える長文詠唱がある。詠唱なしで普通に発動できる魔法は速攻魔法と言われる。速攻魔法を行使できる者は少なく、その魔法も詠唱することで威力が増すので、大体の人は詠唱をする。

 この子は詠唱なしで威力を調節しながら電撃魔法を使った。一体何者?

「ごめんなさい!今治しますので!」

 転げまわった俺を女の子が膝枕をする。女の子の手から緑色の光が迸り、なんだか身体が軽くなっていく。あれ?回復魔法って激レアなんじゃなかったっけ?行使者も数える程度しかいないとか。ほんと何者?

「・・・まぁ、今のくらいの威力ね。やってみます。」

「はい、よろしくお願いします。これは前金で・・・」

 ガチャリッ

「こんなところにおったか、サリフィアッ?!!」

「・・・父さま。何故ここに・・・?」

 なんか、人型の化けモンが扉開けてきたんだが・・・?え?父さま???あ、膝枕してもらったままだ。死んだな。

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