第11話 考察
あの場で九条に明言することはなかったが、やはり最悪の想定を考えないようにすることは難しい。
まず考えなければならないのは地の王についてだ。ひいては三王――全ての王について。
元より争いを繰り返していた三王の間に地の王が仲裁に入る形になっているのだから、その地の王が寿命を迎えていなくなれば、当然再び争いは起こるだろう。これまでが、そのやり方で良い結果を生んでいたから変わらず継続される可能性も考えられるかもしれないが、抑止力が無くなれば必ず変化は訪れる。これは間違いないし、なんなら人間でも同じことが言える。
もちろん、三王が争いを始めるのを人間がただ黙って見ているはずがない。警戒を強化するのは当然として取り締まりも強めるはずだ。が、王と呼ばれる者の不在は後々必ず問題になる。だからこそ、今のうちに次の王を決めておく必要があるわけだ。
そこで白羽の矢が立ったのが九条というわけだ。本人曰く珍しい力で、八重桜先生曰く強い力らしいから、王の候補ということ自体に違和感は無い。未だに力を使いこなせていないとしても、これからのことを考えれば適役だろう。
ここまではいい。まだ、大問題では無い。
本題は、三王の中には争いを望んでいる者がいる、ということだ。それが一人なのか二人なのか、はたまた三人全員なのかはわからないが、確実に戦争を起こそうとしている者がいる。
理由は火を見るよりも明らかだ。戦争がしたい王にとって厄介なのは、争いを監視している地の王であり、その眷属である地下十家だ。そして今、その王が死の淵に立っている。ならば、その機を逃すはずがない。現・地の王は手を下さずとも死ぬ。それなら何よりも先に次の王候補を消すのが道理。
これが、九条が狙われているという証明だ。
そして――もう一つの問題が浮上する。
次の王候補だから九条が狙われているという仮説が立てば、次はどの王が狙ってきているのか、が問題となる。
牛鬼は風の王の眷属で、大鬼は火の王の眷属。つまり、この二人の王は敵だと判断していいだろう。とはいえ、残る水の王が味方かどうかはわからない。列車事故の時に争っていたのは火の眷属と水の眷属だと聞いたし、少なくとも人に対して悪い影響を及ぼしているのは間違いない。
俺如きが辿り着く答えに、八重桜先生を始め地下十家の人が気付かないわけがない。にも拘らず王候補である九条を警護しない理由は? それとも裏家業よろしく忍者のような者が守っていて、俺が気付いていないだけ、とか。可能性はあるが、牛鬼のときも大鬼のときも助けが入らなかったことを考えれば、いないのだろう。
では、何故か。
「考え得る限りの――最悪、か」
敵が化物だけでなかったとしたら?
そんなことを考えてしまう俺の頭は――腐っているのだろう。
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