第15話 聖都へ!

 二日後、娼館リナーヌから二台の馬車が出立した。


 サナさんをはじめとする数人の娼婦と、あたし達を乗せた馬車はとても正規とは呼べない行路を選び進んでいく。

 それは、ラスナードが言った通り安全な旅ではあった。


 実際、あたし達は誰からも襲撃を受けず、無事に聖都へ辿り着こうとしている。

 だが、聖都を目前にして、ここまでの道のりを馬車の中で振り返ると……。


「あまり、楽しい旅ではなかったわね」


 ……それだけのことでめまいを起こしてしまいそうだった。


「どうして? 私は楽しかったよ?」


 のんきに首を傾げるリズを見て、思わずため息が出る。


「あんたはまた……ここに来るまでどれだけ危ない奴らに会ったと思ってるの?」

「え? みんな賑やかな人達だったよ?」


 ……その賑やかな人は皆、もれなく善良な市民ではなかったのだが……。

 道案内に雇われた男は盗賊だったし。

 寝床を提供してくれた男は山賊だったし。

 立ち寄った港町で食事を共にした腕の太い船乗りは全員が海賊だった。


「……酒場で働かせたのがいけなかったのかしら……荒っぽかったり、酔っ払いだったり、こわい男を見慣れてしまったのね」


 思えば、ゼトの正体を知ってもすぐに親し気に接したり……。

 ラスナードやサナさんのような人に対しても、リズはこわがるような様子が一切なかった。


 それを、優しいの一言で済ませてしまうのは簡単だけれど。


「お姉ちゃん……あんたの将来が心配になるわ」


 つい、親の顔が見てみたい……なんて思ってしまう。

 しかし。


「皆さん、見えてきましたよ」


 短い御者の一言で、リズは心配する姉など放って外の景色を覗きに行ってしまった。


「お姉ちゃんも見に来て!」


 膝立ちで振り返る妹に、もう何度目かわからない溜息を吐く。


「あれが、聖都なのね!」


 そして、はしゃぐリズに頷き、同じように外を覗いたあたしは。


「……ようやく到着ね」


 無事目的地に着いたのだと、心労から来るものではない安堵の溜息を吐いた。

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