12話
心地よい日差しの昼下がり、開け放たれた窓の中で畳の上に一人の男が寝っ転がっていた。
「ん~、やっぱりこういう天気のいい日には昼寝に限るな~」
ゴロゴロ
清らかな鳥の鳴き声。
優しいそよ風が吹き、小さく葉の擦れる音が耳に届く。
一転そこに力強い掃除機の音が入ってきて曲調が大きく変わり――
――ん?そうじき?
神主さんが頭を上げるのと同時にドアから顔をせたのは巫女装束の女の子。
「ああ~!神主さんさぼってるじゃないですか!!」
「いや、これはだな、ほら、ずっとやるより休憩をはさんだ方が効率がいいだろ?」
「まったくやってないんじゃ関係ないでしょ!もう、頼んだ窓ふきはどうなったんですか?」
「ん?窓ふきならやっといたよ?」
「わっ、ピカピカじゃないですか!」
「まあ、対魔結界も施してある、我ながら最高の……」
「すごいですね。じゃあ次は何をしてもらおうかな…」
「おやすmzzz…」
「寝ないでください!?そうですね…頑張ったらもふもふさせてあげないことも――」
「次は何をしたらいいですか、紺さん!?」
ガバッ!!
「ふえっ!?…じゃ、じゃあお風呂掃除をお願いします」
「わっかりましたー!もっふもふ!もっふもふ!」
スキップしながら出ていく神主さん。
――いつか誘拐されないかな?
「まあ、こんな山の中なら心配ない……いやむしろ心配ですっ!?」
☆
「ああ~つかれた~」
再び畳の上にたおれる神主さん。
「お疲れ様です。おかげさまできれいになりました~」
「そうだな~。…もふもふは?」
「そんなこと言いましたっけ?」
「ええ~…」
がっかりした様子でけだるげに足元に落ちていた最後のごみを拾い上げると、語彙箱に向かって投げて――
かさっ、ぽろっ
「……」
「…入ってませんけど?」
「…ひろって~」
「いやです~」
「しょうがないな……ほいっと」
神主さんが軽く指を振ると同時にごみが浮き上がり――
すぽっ
ゴミ箱に吸い込まれました。
「ふ~おわった~」
「……」
「そういや、今日の晩御飯どうする?紺が疲れてるなら作ってもいいけど?」
「……」
「どうかした?」
「は、はいっ!?さっきのどうやって?ひゅんって、ごみがひゅんって…」
「ほえ?」って顔をして神主さんを見上げる紺。
「ん?…念力みたいなものかな?」
「…ひょっとして神主さんってすごい人だったりしますか?」
「まあ、普通の人と比べたらすご――」
「ひょっとして人間じゃないのかも…」
「いやいや、人間だからっ!?…まあいろいろあってね」
「そう言えば神主さんの過去ってあんまり聞いたことなかったですね。神主さんの子ども時代見てみたいです~」
「ん~、ある人のもとに預けられててね。いい人だったんだけど、修行がきつくてきつくて。いやあれはもう修行というより殺人未遂だよ…」
当時を思い出したのか震えだす神主さん。
「わわっ、ごめんなさいっ!」
「いや、だいじょうぶだいじょうぶ。まあ、師匠のおかげで強くなれたのも事実だしね。じゃあ、ご飯作ってくるから。」
神主さんは立ち上がると部屋を出ようとして――
「神主さんは今は楽しいですか?」
神主さんは驚いたように紺を見ると、
「ああ、楽しいよ」
微笑むと、今度こそ部屋を出ていきました。
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