7話

神社の境内で一人の巫女装束の少女が掃除をしている。

その頭とおしりからはもふもふの狐耳としっぽ。


ザッ、ザッ…


その後ろから忍び寄る狩衣姿の男の影。

足音に気付いた紺が振り返る。


「ん?あっ、神主さん。お疲れ様です。」

「お疲れさま。……ん~?」


顎に手を当てると神主さんは首をかしげる。


「…どうかしましたか、神主さん?」

「いや、なんか違和感があるなと思ってね。…最近何か変わったこととかあったかい?」

「…さあ~、どうでしょう?」


――まさか神主さん、気づいてくれたんですか!?


期待のまなざしで神主さんを見上げる紺。

神主さんはそんなことにはまったく気づいてなくて。


「どうって、変わったのか?」

「さて、どこが変わったでしょう~?」

「ぐっ!?」


――まさか…これがうわさに聞く”どこが変わったでしょう問題”というやつか!?…もし外したり気づけなかったら1週間は口をきいてもらえないとかいう……これは慎重に考えないと……


「わかんないんですか?」

「いや、わかるぞ…わかるはずだ…よく考えろ僕……」


急にぶつぶつ呟き出す神主さん。


「だ、大丈夫ですか?」

「何が……はっ!?」


紺の体を眺めていた神主さんの目が一点で止まった。


「紺、わかったぞ!」

「なんですか?」


わくわく、わくわく


「尻尾がもふもふになった!!」


ガクッ!


「むぅ〜〜!!!」


ぷくー


ほっぺを膨らませて睨んでくる紺に神主さんタジタジです。


「え!?ちがうの!?」

「違わないですけど…冬用の毛に生え変わりましたけど…!でも私が当てて欲しかったのは違います〜!」

「えっ!?本当に!?じゃあ、えと、その……わかった!」

「なんですか?」

「髪型が変わった!」

「せーかいですっ!」

「よしっ!…なるほどね、うん、かわいいんじゃないか?」

「ほんとですか!?」


紺の顔がぱあっと笑顔になる。


ーー神主さんにかわいいって言われちゃった!わーい、わーい!


「じゃあ、正解の報酬にもふもふぐぅ!?」


笑顔で提案した神主さんの腹にめり込む拳。


「もう!なんでそんなこと言っちゃうんですか!いい感じだったのに!!私の喜びを返してくださいよ!」

「いや、…だって新しい毛が…ぐふっ…もふもふもふで…」

「ていうかなんでそこだけすぐ気付くんですか!?どんだけ見てるんですか!?そこしか見てないんですか!?」

「ふっ、毎日もふもふ観察日記が10行埋まるぐらいかな」


キリッ!


ぼすっ!


「ぐうっ!?」


2発目の拳がめり込む。


「観察日記なんて…やっぱり変態です…」

「やめろ、だから静かに引くなって!書いてないから!」

「もう!…もっと私のことも見てくれてもいいのに…」

「ん?なんか言ったかい?」

「な、なんでもないです!!」


顔を赤くして逃げていく紺に、


「ん?なんだったんだ?」


神主さんは再び1人で首をかしげるのでした。









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