6話
「あっ、もうちょい右です!行きすぎました!もうちょっと左!」
さっきから少し大きめの声で指示をしているのは巫女装束の少女。
その隣では狩衣姿の男が、爪先立ちで箒を上下逆に頭上に持ってダンスを踊っていた。
…もとい蜘蛛の巣を取ろうとしていた。
「ん〜、どうだ?取れたか?」
「あっ、ありがとうございます!」
最近、どうも蜘蛛が大量発生している。
巣を払っても払っても次の日には新しいものを見つけてしまう。しかも、高いところに張られると、背の低い紺には届かないので、神主さんを召喚したと言うわけだ。
「…こっちもいいですか?」
「…まったく、どっちもこっちも蜘蛛だらけだな。…」
「まぁ、4方向山に囲まれてますからね…あっ、もうちょっと上、左…」
紺の指示に合わせて箒の先がゆれ、それが巣を直撃した瞬間、
ーー!?
一匹の蜘蛛が箒に弾かれ空中を舞いーー
「〜〜っ!?」
紺の頭の上に着地した。
カサカサ、カサカサっ
「んん〜!神主さん、取ってください〜!!」
「お、おう、待ってろ今捕まえてやる!…あっ!?」
ぽふっ、ササッ
神主さんの手をすり抜けて蜘蛛は逃げる。
「ん〜!早くしてください!くすぐったくて気持ち悪いです〜!」
「まあ待てって、こいつっ!なかなかすばしっこいぞ!?」
ーーあ、あれ?なんか今知らず知らずのうちに神主さんに頭なでなでされてるような…えへへ…
「ってそうじゃなくて!早く!」
「おう、……そこだっ!!」
狙い澄ました一撃。
…をもすり抜けて再び蜘蛛は跳躍。
神主さんの目の前をゆっくりと通り過ぎてーー
ーーああ〜っ!?
「こ、紺…」
「ん?取れました?」
「いや、その」
「なんですか?」
「…蜘蛛が尻尾の中に…」
「〜〜っ!?…どこ?どこなの?…くすぐったいです!」
キラーン!!
ここで神主さんの目が光りました。
「しょうがないな〜、僕がとってあげよう。尻尾じゃ見にくいだろうし…ほら、動いちゃダメだよ…ここだっ!」
シュッ、しゅっ!!
「……なんで紺が避けたの?」
「今どさくさに紛れて尻尾触ろうとしたでしょ!?
ーーギクッ!!
「いやいや、そんなことはないー
シュッ、シュシュっ、
サッサッ、サササッ!!
「…よけないでほしいな」
「よけます!」
「蜘蛛がいるのと俺にもふもふされるのどっちがいいかって言ったらもふもふじゃない!?」
「どっちも嫌です!」
「…」
しゅっ!、サッ!
「話の途中に手を出さない!!というかほんとの蜘蛛はそろそろとってほしー」
紺の足元を一匹の蜘蛛が悠々と通り過ぎー
「あ、さっきの蜘蛛さん!!…取れてたのか、よかった。…ん?」
ツーー…
神主さんの背中を冷や汗が滑り落ちて、
「ん、てことはもともと取れてたってこと…神主さん!」
「ひゅるる〜☆(口笛」
「とぼけないでくださああぁい!!」
今日も常静時はにぎやかです。
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