第5話 別離の日

カーライルはウルだったのだろうか。

それとも別の形をとったもう一人の私だったのだろうか?

全く別の存在になりたかった夢見がちな私の願望だったのだろうか?

たまに思い出を振り返る。気づけば後ろに道は無く、景色は前に続くだけ。

学校の休暇中、エナはマグナスと一緒にテーブルを囲んでいた。

今エナは寮に入っている。兄は一人にさせておかなければ、機嫌のいい人物だった。

経験を積むにつれ、エナにもなんとなくそういったことがわかるようになった。

――やっぱり私は一人なのだろうか。

かつて誰かと溶け合っていた頃のことを。

二人で一つだった頃のことを彼女は思い出す。

そこにいるだけで何もかも満たされていたあの日のことを。

ウルトリアとエナ。希望という名の半身。欲望という名の半身。無知という名の半身。

そのために生じた恐れと空想。過去へのしがらみ。カーライル。

それは彼女がそう思っていただけなのだろうか。夢は生まれる前から死んでいたのだろうか。





そうではないはずだ。それらは全て終わってしまったけれども、

その正体が何だったのかは結局、今の彼女にもわからない。

 エナは今日もぼうっとした眼差しで窓を見ている。窓の外に夢を描きながら。

おぼろげな未来を、今度こそ自分のものにするために。

理想の王国はあるだろうか。ウルは生きているだろうか。ウルは世界のどこかにいるだろうか。

私の中や、それともウルではない他の誰かの中に。

心が痛くても、誰にも理解されなくても、それでも……生活は続いていく。

生きていく機会が与えられている。

彼女は若い。

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