第4話 誰でもない子

明くる朝、マグナスがエナの部屋にやってくると、そこには何も無かった。

「おい…。」

何も無い床の上で横になっているエナの肩を揺すぶる。

  「あ。おはよう。兄さん。」

「……おはようじゃないだろう。部屋の荷物はどうしたんだ。気でも狂ったのか。」

「私、家出てくの。だから、荷造りしてたのよ。」

「…そんなにおもしろくないか。俺といてもつまらんか。」

「そういうわけではないけれどね。」

「ウルと一緒か。いつまでもお前は夢ばかり見て。」

「たぶん理由は同じかもしれない。でも私は兄さんとは違うわ。」

「どうだかね。どちらにしろ死んではダメだ。死んだらみんな、不幸になる。

絶対に俺の前から消えるな。早く進学するんだ。」

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