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「それじゃぁお兄ちゃんと一緒に行こうか」
どうしようかと思ったけど、お姉ちゃんはまだ小さい弟たちを連れていて、この子には声を掛ける事しか出来ないみたいだから。このまま放って行くのも何だか気が引けるし。
「やだぁ」
またそう言ってヤダヤダと首を振る。結んだ髪から滴が飛んでくる。止めて、横から降る雨には対応してないの。
「風邪引いちゃうよ」
「やーっ」
一体どっちの「や」なんだ。お姉ちゃんが困ったようにこっちを見ているぞ。ほら、早く行かないと怒られるよ。
「やだ」
「怒られるの嫌でしょ? お兄ちゃんも一緒に行ってあげるから」
そう言って手を差し伸べると女の子は勢いよくこっちにジャンプした。あー。
小さな手を繋いでアーケードへ向かう。お姉ちゃんはまだ険しい顔つきだ。
「こらっだからはなれちゃダメって言ったでしょ!」
顔を赤くして怒る姉に妹はぷくっと頬を膨らませて答える。なお反省はしていないらしい。
「こんなにぬれてカゼ引いたらどうするの!」
「ひかないもんっ」
「そんなの分からないでしょ!」
そりゃそうだ。どこからの自信で風邪を引かないなんて。それともこんなどしゃ降りに濡れに来たのがアレだから風邪引かないって?
お姉ちゃんはそんな妹に呆れたため息を一つ吐いてそのおでこに触れた。
「もう、びしょぬれになっちゃってほんとうにカゼ引いちゃったらどうするのよ」
「んんー」
怒っていたと思ったら今度は心配した顔になる。まだ小さいのにちゃんとお姉ちゃんだ。
「はい、良かったらこれ使って」
ポケットに入れていたハンカチをそんな二人の間に差し出す。お姉ちゃんは一瞬不安そうな顔をしてそれから頭を下げた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。返さなくていいからね、お家に帰ったら捨てていいよ」
それじゃぁね、と声を掛けるとお姉ちゃんはもう一度頭を下げて、弟たちはそれにつられたようにぺこりと頭を下げる。あの女の子は、一人だけ満面の笑みで手を振っていた。
そのあと背中にワイワイと子供たちの声が聞こえた。雨の中でもとても楽しそうでなんだかちょっと嬉しくなった。
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