カッパと雨と長靴と
カゲトモ
1ページ
天気予報で大雨だとは言っていたけど、まさかこんなに降るとは思わないじゃない。もしかして梅雨だ梅雨だと言われながらもそんなに降らなかったのは、実は今日大雨にする為じゃなかったのか? ってくらい昨日と今日は良く雨が降る。止んでいる時間が少しもないくらいずっと降っている。それが明日も続くんだとか? ちょっと神様、空の様子どうなっているわけ? このままじゃ夏の間は一滴も雨が降らないんじゃないか? なんてね。
雨音をBGMにして颯爽と歩く。装備は雨傘とレインブーツ。ダサいなんて言わないで。正直恰好よりも仕事に影響が出る方が嫌なんだよ。それに俺のことなんて誰も見ていないだろ? ベスト姿の制服に長靴だけどさ。
若い頃だったら絶対に恥ずかしくて替えのスラックスに履き替えるか、我慢して濡れたまま過ごしていたんだろうけれど。あぁ大人になったんだなぁってこんな所で実感する。面倒くさくて体面を気にしなくなったってのとはちょっと違うから、本当に違うから。なんて自分に言ってみる。
いや、本当に違うから!
「ダメっ!」
ビクッ! と肩が跳ねてしまった。突然の言葉に声が出なかっただけ上出来かもしれない。
顔を上げると声の主をすぐに見つけることが出来た。そして『ダメっ!』と言われた人物も。
「みじゅたまりぃ」
アスファルトを指差して笑う女の子。カッパを着てはいるけれど帽子を被らないままアーケードの外に出てきてしまっている。怒られたのはこの子だ。
「こらぁっ!」
そして怒っているのは色違いのカッパをかぶった女の子。アーケードの下でブンブン、と怒ったように手を振っている。どうして連れ戻しに来ないのか。それは彼女が下の子たちと手を繋いでいてすぐに動けないからだ。電車のように連なった子供は彼女を含め四人だ。
「ねぇ、お姉ちゃんが呼んでるよ」
女の子に声を掛けると一度だけ振り返ってブンブンと首を横に振った。
あー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます