我が心は親の影を追つてゐる!

ただ其処そこありて何をするでもなく、

泥にまみれた手をとり、愛を注ぐ母の影を。

音声おんじよう高く笑て泣いて怒りてなほ、

泥に塗れた両手で、私を抱く父の影を。


然し今私はこの両足で立つてゐる。

誰のささへも受けず、誰の手も届かず、

孤独の中で、今立つてゐる!

故に私は親の影を渇望する。

その飢えが満たされぬ事を知てなほ、

私は親の影を追つてゐる……

孤独の海にて今も!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る