第17話【奇跡の花1】
舞花が倒れてから一晩が明けた。僕は結局寝たのか寝ないのか分からないうちに朝が来てしまった感があった。
『・・・つっ!頭がいてぇ・・・』
昨夜は舞花の事を考えていて眠れなかったせいか?ひどい頭痛に襲われていた。ベッドから起き上がろうとしても身体が動かないほどだ。
でも昨日の今日だ。誠也もきっと同じだろうと思い、今日は何としても学校に行って誠也と逢わなくては!と言う気持ちが何故かあった僕は必死に身体を持ち上げようとした。
『マジかよ・・・身体が動かねぇ・・・』
僕は焦った。今までこんなこと、一度もなかった。どんなに夜更かししたって翌朝にはしっかりと元気を取り戻していた僕が、たった一日、心配な事があり眠れなかっただけで身体まで言う事を聞かなくなるなんてあり得ないと思っていた。
が、現実問題、僕の身体は言う事を聞かない。どんなに力を入れても起き上がれなかった。
『何が起こってるんだ?』
僕は急に不安になった。誰かを呼ぶにも、今家にいるのはたぶん後妻だけだろう。あの人は人当たりはいいが、どうも馴染めない。
出来る事なら喋りたくもないのに、身体を起こすのを手伝ってくれなんて口が裂けても言えないと思っていた僕は、何度も自力で頑張ってみた。
やはりダメだ・・・
僕はベッドの周りを見た。
『よしっ!首は動くぞ!』
首が動いたくらいで喜んでる自分が滑稽に思えたが、今はそんなこと言ってる場合じゃない。
『腕はどうだ?』
僕は腕を動かしてみた。
正確には動かそうとしてみた。
『・・・動かねぇ』
そう・・・
首から下が何故か動かないのだ。
『これじゃ、誠也にメールすることも出来ねぇじゃねぇかっ!』
時計を見た。5:48だった。
僕は、段々イライラして来た。
イライラすればするほど、身体は言う事を聞かない!
僕は諦めて目を閉じた。
しばらくして、僕はどうやら眠ってしまったらしい。こう言うのを不貞寝と言うのだろう。僕は久しぶりに夢を見た。夢には、屈託のない笑顔の舞花が僕の膝を枕に横になっている。普通は彼女の膝に彼氏が横になり・・・と言うイメージがあったが、夢の中では逆だった。
と言うか、僕は彼氏でも何でもなかった。
とにかく、夢の中の舞花は昨日倒れた時の蒼白な顔ではなく、健康的な薄いピンクがかった頬に色白な肌。普段はあまり見た事がないパンツ姿だった。スカートの舞花も素敵だが、パンツスタイルもなかなか似合っている。
舞花は、僕の膝の上の頭をコロコロと動かしていた。夢なのに、動かされるとものすごくくすぐったかった。
「くすぐったいからやめてくれよ。」
と僕が言うと、舞花は楽しそうにもっと動かした。僕は、そんな舞花が愛おしく見え、コロコロ動いていた頭を両手で押さえた。ちょうど舞花の顔が僕の正面に来た。僕は、そのまま舞花にキスをした。
そしてそのまま、ゆっくりと膝を抜き、寝ころんでいる舞花の横に寝転がりながら抱きしめた。舞花も受け入れてくれた。夢の中で僕たちはひとつになった。
「舞花・・・愛してる。」
僕が言うと、舞花も
「私も。ずっとそばにいてね。」
と言ってくれた。これが現実なら・・・と僕は思った。夢の中の僕たちは再び抱き合った。
「・・・・・・ル!」
『ん?誰か他にいるのか?』
僕は誰かに呼ばれた気がした。しかしあまり気にせず夢の続きを・・・と願ったがどうやら夢はどんどん薄れて行っていた。
「・・・ケル!」
やはり誰かが僕を呼んでいる気がする。
「タケル!おいっ!どうしたんだよっ!」
今度はハッキリ聞こえた。間違いない。この声は誠也だ。僕は慌てて目を開けた。
「タケルっ!大丈夫か?」
誠也は僕の身体を激しくゆすっていた。現実に引き戻されてしまったのか・・・とかなりショックだったが、それより誠也の慌てぶりが気になった。
『まさか、舞花に何かあったのか?』
僕は誠也に、
「なんでお前がここにいるんだよ。」
と聞いた。
「何で・・・じゃねぇよっ!昨日の事もあったから迎えに来たんだよ。そしたら、まだ寝てるっていうじゃねぇか!部屋に来たらお前の身体がやけに冷たくて!呼んでも全然起きねぇし!動きもしないし!死んじまったかと思ったじゃねぇか!!」
あのクールな誠也が取り乱しながら言っていた。
『そうだっ!僕、身体が急に動かなくなったんだった!』
一度起きてからの事を思い出した僕は、誠也に言った。
「朝、起きたら身体が動かねぇんだっ!」
言いながら起き上がろうとした。
・・・普通に起きられた。
『あれ?なんで???』
僕は、さっきあんなに必死に起き上がろうとしてもビクともしなかった身体が、何事もなかったかのように普通に動く現実に唖然とした。
一番唖然としてたのは僕ではなく、誠也の方だったかもしれないが・・・
誠也は、
「何言ってんだよ!心配させんなよ・・・やめてくれよ。みんなで俺のそばからいなくなるなんて。洒落にならねぇよ!」
と床に座り込みながら言った。
誠也も不安でいっぱいなのだ。クールにしている分、人に弱みが見せられず一人不安と闘っているのかもしれない。
僕はそんな誠也を見て、
「悪かった。心配掛けて。でもホントに朝は首から下がまるっきり動かなかったんだ。何度動かそうと思っても動かせなくて、またそのまま寝ちゃったらしい。ホントに悪かったな。」
ベッドがから床に降りながら言った。
『普通に動けるぞ!』
心の中で僕は、動けるってこんなに嬉しいことなんだと感激すらしていた。
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