クラス分け

 入学式が終わり、クラス分けの結果が校門近くのパネルに設置される。「天武学園」は入学試験時の成績によって、優秀な順からS、A、B、C、Dに分けられる。この区別の仕方であるが、最上位のSクラスはある一定の成績でないと、ここには入れない。


  また、毎年百名までの定員であり、相当な者でしかSクラスにはなれない。しかし、今年の新入生は豊作であり、八色姓族は勿論、その他にも成績優秀者がSクラスに在籍する。Aクラス以降のクラス分けについては、それぞれ均等な数になるように分ける。


「やったぁー!!聖那、あたし達同じSクラスだよ!最初はどうかなーって思ってたけど何とか入れてよかったよ」


「芽衣、あなたそんなに優秀だったんですね……」


「あっ、聖那酷いー!!あたしの事そんな風に思っていたんだ!でも、私の事は意外に思ったのに、自分の事は当然のように受け容れているんだね」


「そんなにも、試験の内容って難しかったですか?筆記試験は常識範囲でしたし、実技試験も提示された魔法が下級の魔法だったので。それに、周りのレベルを見ているとつけあがる訳ではないですが、そんな気はしていました」


「聖那って意外と性格悪い?」


  軽口を叩きあいながら、少し会話に花咲かせる。 そんな2人はとても優秀な部類に入り、見事エリート街道への道を歩もうとしている。


「それでは教室はあちらのようですし、そろそろ行きましょうか」


 二人で並んで一年Sクラスの教室へ向かう。


「式場もだったけど、この学園相当お金かかってるねー。すごく綺麗だし、道々に高そうなものが置かれてるから壊したらって思うと怖いよ」


 そうカラカラと笑う芽衣。そんな彼女とこれからについて軽く話し合っているとすぐに教室の前へと着く。そうして、教室に入ってみるとまばらではあるが既に何人か生徒が席に座っていた。


「お、おい。あの2人めっちゃ可愛くね?」


「ああ、背の小さい茶髪の女の子は猫っぽくて可愛らしいけど、隣の綺麗な髪の女の子、あれは別格だ」


「お前話しかけてみろよ」


「そんな勇気は持ってねえよ!」


 ヒソヒソと話し合う男子諸君。どうやら、二人の美少女ぶりに怖気づいてしまい、興味はあるが話しかけるほどの気概は持っていないらしい。


「席は自由みたいですね。前の方が空いているのでそこに座りましょうか」


「はーい」


 そんなことには何も気づかず、これまた2人仲良く並んで席に着く。


「ふぅ…。これからガイダンスっていうのはわかるけど、ちょっと疲れちゃったかな。気疲れってやつかな。入学式まではずっと緊張してて……、でも聖那と話してたらいい感じに緊張が解れてたけど、ここに来てちょっとぶり返してきちゃったかな」


「芽衣ったらおじいちゃんみたいですよ」


「えへへ。じゃあ、お姉さんのその立派な二子山でワシを癒してもらおうかのぉ……」


「ち、ちょっと、止めてください」


 大分仲が良くなり多少は遠慮が無くなったのか。芽衣が聖那に対してセクハラを仕掛けるも、ただのじゃれ合いになってしまう。


「むぅ、もうちょっと初心な反応が見てみたかったんだけど……」


「相手が女の子なら、冗談だってわかっていますから。でも、芽衣がそっちの気であるならば話は別ですが……」


「違うよ!ただ、からかってみただけだよ!」


 逆に照れる芽衣を簡単に手玉に取ってしまう聖那。二人にしてみれば会って間もないがお互いに気の許し合える存在になった為に、すぐに流してしまえる。


 しかし、青春期真っ只中の男子諸君はそこまで簡単に流してしまえるほど甘くない!あまりマジマジと見てしまうと、気付かれてしまいその後の学園生活は早々に女子から後ろ指を指されて生活していくことになりかねない。


 そんな事がにはなりたくないが、前で行われているけしからん事には興味津々である。何とかそのイベントを目に収めたい彼らだったが、いち早く感づいた女子集団が揃って男子諸君の目の前に移動した。


 絶妙に見えない角度で、もう少しもう少しと頑張ってスッポンの様に首を伸ばそうとする彼らを、クラスの女子集団は冷たい視線をお見舞いする。


 彼らのこれからの学園生活は見事、最初に危惧していた通りのものとなったがそれに気づくのはもう少し後の話である。

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白銀の少女は触手なんてなんのそのです @zanbarara

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