第2話

不思議な出会い②



「お望みは???✨」


店主は、店の買取りシステムを説明すると、

レジのある、高いカウンターテーブルに肘をついて私を見た。


飴の表面のように、テカテカと光るキャラメル色したカウンターは、長年と使われているように見えた。


店内に流れる空気は、

何処かおばあちゃんの家に行った時に嗅いだ事がある、懐かしいような、、古くさいような匂いな立ち込めていた。


その匂いが、疲れた心の私を素直にさせていた。


「みなさんのいらない記憶、思い出なんかを、買い取ります✨


ただ、買い取らせてもらうと、、

その記憶や思い出は無くなり、思い出せなくなりますが、、


思い出したくない記憶は、無い方が生きやすいのでしたら、、、

買取をオススメしますよ✨


、、みなさん。

お気軽に、利用されて居ますよ???✨」


店主は、怪しげな笑顔を見せながら、目を細めさせた。


私の中で、フワリと静かな図書室での、静かな空間で、小さく響いた事を思い出した。


そして、次の瞬間、彼の何だか可笑しくて貯まらないという顔が思い出された。


、、、ダメ!💦

!!!💦いたたまれない!!!💦


私は胸が刺されるように痛くなるほど、どきりと胸が痛んだ。

こんな事では、もう彼に会わす顔がない!!!💦

いっそ、死んでしまいたい!!!💦


、、こんな気持ちを抱えたまま、、

明日から、どうやって学校に、通えば良いの???💦

生きていけない、、💦


ああ、、

私の裏での通り名は、ぷー子さんだわ!?💦

、、きっと名付け親は、、、


私は、白いパーカーの紐を握りながら、

笑っていた彼の顔を思い浮かべて、胸を押さえた。



「あの、、!!!💦

私のいらない記憶、、買い取って貰えますか、、?💦」


私は、迷いながらも店主の顔を見ながら、

固まる口を何とか動かした。



にマリと笑う店主。

、、妙に長い犬歯が、にょきりとくちもとからみえた。


私は思わず、眉をひそめた。


犬歯の事でじゃない。

笑ったことに対してだ。


、、こちとら真剣なのだ。

生きるか、死ぬか。


デットorライブだ。


、、いや、勿論。

これからの学校生活での話のことだ。


ぷー子さんとして生きるか、

女子として生きるかでは、

差がありすぎる。

、、苦しすぎる。


せめて。

全てをなかった事にできれば、良いのだ。

あんな記憶、思い出、、

誰の得にもならない💦



「、、いいでしょう???✨


ただ、、消去をする理由の根源も、いらない記憶として買い取らせてもらうことも出来ますよ???✨」


店主は童顔だった。


愛嬌のある浅黒い顔。


それなのに、目元は獲物を狙う様な、

ギョロリとした目つきをしていた。


青い上下のスーツに、白地に細い黒の縞の入ったシャツを着た彼は言った。

私の心をを見透かした様に。


「彼の事が好きなんでしょう???


そんな気持ちがあるから、今回の様に苦しむのです。

その気持ちも、、

元々、なかった事にしてはいかがでしょうか???✨」


ぐさりと、その言葉に刺さる私。


なぜ、それを、、

この人が知ってるか⁈💦


ショックで泣きたくなる私。


私の想いを何故知っているの???💦


それでも、、目の前の店主の彼がいう通り。


大好きな彼の目の前で、プが出た以上。

彼と仲良くなることは皆無。

きっと嫌われたわよね、、?💦


私は、涙を浮かべて頷いた。


「えぇ、、。

みんな、、お願いします、、

でも、そんなことが出来るのですか???💦」


「、、できますよ?✨

あなたが、お望みとあらば、、✨


お見積もりしましょうか?✨」


店主は、手のひらサイズの、液晶が大きく見やすい電卓を取り出すと、何事か打ち始める。


そして、、ピタリと手を止めると呟いた。

「、、そぅですね、、✨

彼への想いと、、

その、、、例の思い出。


その2つで、、これくらいでいかがでしょう、、???✨」


電卓には、五万円という金額が打ち込まれていた。


私は電卓と、アキンドの顔になった店主の顔を何度も見比べたのでした。


カウンター横の、私の背よりも大きな古時計が、チクタクという音が、静寂な店内に響き渡っていた、、、。



※※※


「毎度〜〜✨」


紫色の扉が閉まるのを見ながら、

店主は笑みを浮かべた。


丸い室内の部屋奥から、

赤黒いカーペットの上に悠々と歩いてきた、黒猫が大きなため息をついた。



「この、悪徳魔〜。

2倍どりは、悪魔界でも捕まるわよ〜〜???」


お客の居なくなった店内に、

清々しいほど、鼻から抜ける甲高い声。

女性の柔らかな声が響き渡った。



「、、しかも、、ソレ💦

純情乙女!初恋シリーズの『心のともしび』じゃない⁈💦


悪徳〜〜。


どーせソレ、、💦

目が飛び出るほどの値段で、キューピッド達に売る気でしょ、、」


黒猫は横目でジロリと、一睨みした。




「、、にヒヒ〜〜✨

、、気づかない奴らが悪いのさ✨

、、彼女のプは、彼女の好きな男が願ったこと。


『彼女との、二人だけの共有の秘密が欲しい。』


そんな訳わからない願いのせいで、

起こったことなのにな?✨


そーさ。

二人は、とうの昔から両思い。

お互い好き合ってたのに、残念だにぃ〜〜✨」


浅黒い顔の店主は、プルプルと顔を降ると、黒髪の生える頭の真上から、黄色いツノがプルンと出てくる。


黒猫に突き出した人差し指は、フルフルと小さく震えると、見る間に黒く長い爪になる。



「、、僕は、良いことをしてるのにぃ〜✨」


鬼の店主は、そういうと、、、

おもむろに。人間の手とは思えない、黒ずんだ両手で、小さな小瓶を取り出した。


手のひらの上に乗る小瓶の中で、小さくオレンジ色の炎が燃えていた。

「人助けなのにぃ〜✨」


鬼は、ニマーリと、自慢げに笑ってみせたのでした。


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