第205話 実戦テスト

 実際、いつも部活や委員会で連んでくれる他の三人は、かなり優秀な子たちだった。

 智香子がやろうとすることをすんなりと理解してくれるし、場合によってはその上で、問題点なども指摘してくれる。

 松濤女子に入学できている時点で相応に頭が回るはずなのだが、それに加えて、三人が三人とも、それぞれ微妙に違う視野と着眼点を持っていた。

 この三人がいなかったら、智香子も委員会の活動にまで深く関わることはなかったはずでもある。

 いや、多分、委員会に入ること自体がなかった。

 この三人とつき合うようになったのは、ほとんど偶然のようなものだったが、縁というは奇妙な物だな。

 と、智香子は思う。

 その三人は、智香子がやり出すことによくついて来ている。

 円盤は、元はといえば佐治さんの発見が発端だったが、扶桑さんの会社と連携して動く件についていえば、校外の企業との交渉も頻繁に生じて、対処するのがなかなか面倒くさい仕事といえた。

 委員会の先輩方も手伝ってくれるのだが、基本的には智香子たち四人がその二つの案件を取り仕切る形となっている。

 例の円盤に関連する仕事は、もうほとんど智香子たちの手を離れ、外部の公社とか企業が独自に動き出していた。

 円盤の性質を利用して、効率のいい発電機かなにかを作るつもりらしい。

 実用的なレベルの電力をあの円盤から取り出せる物なのか、智香子には判断できなかったが、そちらはそちらで頑張って欲しいという気持ちは持っていた。

 円盤の有効利用については、そうした校外の大人たちに任せておくとして、智香子たちは智香子たちで、例の円盤のおそらくは本来の用途、つまり武器としての可能性を検証する試験を一学期に入ってからも続行している。


「あれの習熟に関しては、個々人の努力に期待をするとして」

 橋本先輩は、委員会の子たちにそういった。

「今回は、集団戦においてあの円盤が、どれだけ実用的なのか。

 それを、検証してみようと思います」

 他の生徒たちに使わせてみる前に、まずは委員会だけで実証実験をしてみよう、というわけだった。

 以前、この円盤について、威力や飛距離などをざっくりと確認してみたが、その結果を踏まえた上で、実際にこれが実戦の場でも使えるのかどうか、確認する。

 というのが目的だった。

「念のため、利き腕ではない方の指でこれを回してね」

 橋本先輩は委員会の子たちにそう告げて、二十人ほど委員会をぞろぞろと引き連れて迷宮へと続く渡り廊下に向かう。

 探索者用の保護服を身につけた生徒の姿を校内で見かけることは、松濤女子では決して珍しいことではない。

 しかし、これだけの人数が揃って、しかも片手の指で円盤を回しながら通っていく光景はかなり珍しい。

 そのかげで、智香子たち委員会の子たちは、かなりの視線を浴びながら迷宮へ移動することになった。

 そのままゲート前のロビーを抜け、ゲートを潜り、迷宮の中に入る。

 そこで、智香子が提案をした、

「パーティ全員がエネミーと遭遇時に円盤を放ち、先制攻撃とする」

 という方法がどこまで通用する物なのか、確かめることになっていた。


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