第173話 委員会の光景

 などと忙しくしているうちに、十二月に入った。

 もう年末なのか。

 と、智香子は思う。

 智香子としては中学に入学して以来、探索部関連でわいわいと過ごしているうちにあっという間に時間が過ぎていった、という感がある。

 松濤女子という学校が特殊なこともあるのだろうが、それまでとは違ってなんか大人の社会と直接触れ合う機会が飛躍的に増大し、それに応じてそれまで考えてこなかったことにも思考を割くようになった日々といえた。

 ただ、その渦中にある智香子にしてみれば、そうした変化が成長という概念に相当するのか、どうも今ひとつ自信が持てなかった。

 他の人たちは、智香子が疑問に思うようなことを些末なこととしてそのまま見過ごしてしまうことを、常識にしているらしい。

 とも、気づいた。

 そういう、普通の人が気づいてもそのまま看過してしまうような事柄に対して、いちいち考え込んでしまうあたりは、どうやら自分特有の気質であるらしかった。

 最近の変化としては、やはり委員会の仕事を手伝うようになったことが多い。

 智香子が委員として活動をはじめて、また一月も経過していないのだが、その間、智香子たち四人組は委員会の仕事全般に関して、数日ごとに仕事を変えながら教えて貰っている。

 上級生の人たちは、まずは委員会の仕事全般の流れを把握して、それから専門の部署に配置をされるような流れを考えているらしかった。

 それが普通の対応なのか、それとも智香子たちだけが特例として扱われているのか、そこまではわからない。

 ただ、もう少し委員会の仕事を智香子たちが把握できたら、そのまま智香子たちは扶桑さんの会社との窓口担当になるようなことが内定しているようでもあった。

 なによりその仕事を作ったのは実質智香子のようなものであったし、先輩方もそのことを自明の前提としている節がある。

 まあ、それはいいんだけど。

 と、智香子は思う。


 その扶桑さんの会社との連携は、既存の探索部用SNSを少し手を加えて、扶桑さんの会社との連携機能を試しているところだった。

 松濤女子で使用しているSNSは、もともと公社が開発した、かなり古いシステムに何度か手を加えた物を使用している。

 長い年月にわたって何度も手を加えているため、場合によってはブラックボックス化している部分などもあり、そうした部分をうまく回避しながら実用上問題にならない代物に仕上げるのは、なかなか難しいらしかった。

 なんでも、八十年代末から稼働し続けているそうで、同じように公社制の基幹システムを用いている団体は多いそうなのだが、その中でも最古参の現役稼働システムになるそうだ。

 八十年代。

 そう聞いた時、智香子は関心をした。

 智香子が生まれるよりもずっと前であることは当然として、その頃にはまだスマホもないはずであった。

 携帯電話は、かろうじてあったのかな?

 でも、智香子はその携帯でSNSシステムにアクセスしたり使ったりする様子をうまく想像することができなかった。

 ともかく、IT関係でそれくらい古いシステムともなれば立派な骨董品といっても過言ではなく、そうした作業を担当しているエンジニアの人たちが連日のように委員会の部屋を訪れて打ち合わせや不具合の報告などをやり取りしている。

 そうした様子も、智香子はその目で何度も目撃をしていた。

 そうした交渉にも慣れているのか、そうした業者さんを前にしても対応に出た先輩方は落ち着いた態度を崩さなかったが、中高校生の女子から仕事を受ける側の大人たちはどんな気持ちになるのだろうかと、智香子は不思議に思った。

 松濤女子以外では見られない。

 そんな光景であることは、まず間違いがない。


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