第158話 千景先輩
「具体的な内容を説明して貰えませんか?」
佐治さんが、片手をあげて千景先輩に訊ねた。
「アイテムやお金、それにパーティメンバーの構成など、人員の管理などをやっていることは知っていますが」
佐治さんが口にした内容は、これまで智香子たちが直接的間接的に接したことがある、委員会の活動内容になる。
想像をするまでもなく、それらについては智香子たちもその内容も察することができた。
それ以外に、智香子たちが知らない、想像できない仕事などもあるのではないか。
佐治さんは、おそらくそう考えたのだろうな、と、智香子は思う。
「それ以外には」
千景先輩は即答をする。
「備品の購入や管理、経理計算、納税、専用アプリなどソフトウェア開発の発注とチェックとか。
あと、これはたまにしか発生しない仕事になりますが、探索者用装備品メーカーとコラボする時などは、交渉窓口にもなります」
「それ、全部ですか?」
智香子は確認をした。
「他にも時折、突発的に雑用などは発生する場合もありますけど」
千景先輩は、そういって大きく頷く。
「実際の探索以外、その周辺の雑事はすべて委員会で処理をしていると思ってください」
それは。
と、智香子は内心でたじろぐ。
仕事量も多くなるはずだったし、なにより、定形外の仕事が際限なく発生するのではないか。
「なんかそれだと、普通の会社くらい忙しくなりませんか?」
香椎さんが、智香子が訊きたいと思ったことを口にしてくれる。
「そうですね」
これについても、千景先輩はあっさりと頷いた。
「端的にいって、委員会は他の一般企業並みの仕事と権限を持ち、それなりに大きな金額を扱っています。
この委員会で一通りの業務をこなせるようになれば、将来的にもその経験は必ず糧として生かせるはずです」
ずいぶんとはっきりした口調だった。
きっと千景先輩は。
と、智香子は思う。
委員会の仕事に、自信を持っているんだろうな。
それに、委員会を経験した卒業生たちがそう実感していて、そのことが在校生にも伝わっているのかも知れない。
前に聞いた、代々委員会にパターンも多いそうだし。
「社会に出る前の実務経験として、これ以上に実践的な物もないはずです」
千景先輩は、強い口調でそう断言した。
「どんなバイトや部活よりも、いい経験になると思います」
いや、理屈としては理解できるんだけど。
と、智香子は半ば呆れる。
ここまで強い自信を持てるのも、かえって凄いかな。
少なくとも智香子自身は、これまで自分の選択や行動について、ここまで堅固な自信を持てた記憶がない。
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