第157話 迷宮活動管理委員会
四人は松濤女子で一番古い校舎の一階へと移動した。
そこに迷宮活動管理委員会の活動拠点があるからだった。
同時にそこは、探索部の生徒たちがこれまでに集めたドロップ・アイテムの保管庫も兼ねていた。
つまり、それだけセキュリティも厳重であり、千早先輩から呼び出された智香子たちは廊下で二度ほどガードマンに呼び止められ、学生証を提示するようにいわれた。
そのうちに二度目は学生証だけではなく、探索者の登録カードも提示した上でガードマンが千早先輩に連絡を取って智香子たちを通していいのか確認をする、という念の入れようである。
女子校の中でこれほど厳重な警戒がなされていることに、智香子は違和感を覚えた。
しかし、よく考えてみるとここに保管をされている物品の中には高額なドロップ・アイテムも含まれているわけで、むしろこれくらい厳重で当然なのかも知れない。
あのガードマンたちも、おそらく探索者として経験を積んでいるんだろうな。
と、智香子は予想する。
そうでないと、探索者でもある襲撃者からこの場を守ることができないからだ。
この委員会の活動拠点は、アイテム類の取り回しを考慮して迷宮の効果範囲内に設置されていた。
そうでないと、かなりの重量物も含まれているアイテムの出し入れがかなり面倒なことになってしまう。
そうした重たいアイテムは、探索者の強化された力でなければ取り回しに苦労するのだ。
そうした校舎内にあるまじき検問をくぐり抜けた先にあったのは、なんの変哲もない校舎内の風景だった。
廊下も、そして、
「迷宮活動管理委員会」
と大きく描かれた紙が貼ってある引き戸も、ごく普通の教室の物にしか見えなかった。
少なくとも、表面上は。
「失礼します」
智香子は他の三人を振り返り、その後意を決して、その引き戸をノックする。
「中等部一年生の冬馬です」
「ああ、来たね」
その引き戸を開けて、千景先輩が姿を現す。
「なにもないけど、入って」
智香子たちは室内に入った。
そこはやはり教室と同じような広さと構造で、どうやら普通の教室をそのまま委員会の部屋として流用しているらしかった。
ただ、机の数は通常の教室よりもずっと少なく、八つほどの机ががらんとした教室の中央に接しておいてあり、その机の上に何台もノートパソコンが置かれている。
「今お茶を入れるから、適当な椅子に座って」
千景先輩はそういった。
智香子たち四人はその言葉に素直に従い、机の端においてあった椅子に腰掛ける。
千景先輩は智香子たちが見守る中、紙コップを取り出してケトルのお湯でティーバッグの紅茶を入れて、四人の前に置いた。
これもまた、なんの変哲もない紅茶に見えた。
「すでにあらかた知っているとは思うけど」
千景先輩は、智香子たち四人に対してそう切り出す。
「この委員会の仕事は、松濤女子探索部に所属する人たちをバックアップすることになります。
ただ、なにしろ探索部の人数が多いし、兼部組の内情も考慮しなけりゃいかないしで、実際の仕事の内容はかなり複雑。
多岐に渡ると思ってください」
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