第71話 月曜日の憂鬱
そうこうするうちに七月に入った。
早いもので一学期も終盤にさしかかっているわけであり、それまでの間に智香子たち一年生は先輩方のパーティの付属物と一年生をメインにしたパーティと、二種類の活動をほぼ半々に行っている。
一年生に限らず、探索部の活動というのは結局のところ引率役の人数によって自然と制限されるわけで、一人の部員が迷宮に入れるのは実質的には週に一度かせいぜい二度くらいに落ち着く。
自然と週末が中心となり、たまに調整がつけば平日の放課後に入れることがある、という頻度であった。
拘束される時間を見れば部活としてはさほどきつくなく、智香子としては特に不満はなかった。
いや、時間以外の部分、肉体的な疲労に関して前述のように、部活の翌日は相応に重篤な筋肉痛になるのだが、それも回数を重ねるに従って体の方が慣れており、この時点ではあまり負担には感じなくなっている。
とにかく、部活がない日の放課後は智香子もたいていは予定がなく、他のクラスメイトとともに掃除当番をしたりファストフードの店に寄ってだべったりと、ごく普通の学生らしい過ごし方をしていた。
そもそも智香子は、部活にそこまで入れ込む必要を感じていない。
探索部に入ったのも、
「そういう珍しい物がある学校にせっかく入学したのだから」
という物珍しさと好奇心が先に立った、ごく軽い動機からでしかなかった。
探索部の活動に対して、そこまでの愛着が深いわけではないのである。
「それでよく続いているよねえ」
梅雨が明け、いよいよ暑さが厳しくなってきたある日の放課後、智香子は久賀久美というクラスメイトからそういわれた。
「探索部の活動、かなりきつそうなのに」
「きついといえば、かなりきついんだけど」
智香子は気怠げに答えた。
「でも、うん。
そういうのは結局、慣れだから」
「慣れねえ」
久美は部活にはなにも所属していない、いわゆる帰宅部だった。
松濤女子は探索部のみに限らず、弓道や剣道などの武道系から陸上、テニスなどの運動部系、それに茶道や吹奏楽などの文化系など、多岐にわたる分野の部活が活発である。
とはいえ、実際にはこの久美のようになんのクラブにも所属しない生徒もそれなりの割合で存在していた。
しかし久美も放課後、学校以外の時間を漫然と過ごしているわけではなく、なんでも他校の生徒たちと組んで女子だけの、いわゆるガールズバンドをやっているらしかった。
智香子はそちらの、音楽方面にはあまり詳しくなかったが、以前スマホで見せて貰った演奏シーンの映像は、それなりに様になっていたように思う。
「毎週、月曜日にぐったりとしてるのに」
身近で智香子の様子を確認している久美は、呆れたような口調でそういった。
「そっちの感覚は、なんだかよくわからないや」
この久美などのクラスメイトから見れば、智香子は「毎週月曜日にぐったいりとしている子」に見えるんだろうな、と、智香子自身もそう思う。
なにしろ、月曜日は学校に来るのにも一苦労で、他になにもする気がおきないくらいなのだ。
それだけの苦労をして、なんで探索部を続けているのだろうかと、智香子自身も不思議に思っている。
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