第60話 〈察知〉の重要性
「入ってからすぐの浅い階層なんかは、〈察知〉のスキルなんか使うまでもなく、エネミーの方からうようよ寄ってくるような感じなんだけどね」
宇佐美先輩は、そう続ける。
「少し深い階層になると、自分でエネミーを探して歩き回らなければいけないわけで。
あ、ちなみに、このウサ耳もその〈察知〉の効果を倍増するアイテムだから」
そういって、宇佐美先輩は自分の頭から伸びている二本のウサ耳型アイテムを指さす。
「その〈察知〉って、どういう風にエネミーの位置がわかるんですか?」
一年生の一人が宇佐美先輩に質問をした。
「それが、人によって感じ方が違うらしいんだよね。
わたしなんかは、だいたいの方角と距離がわかる感じなんだけど、他の人はレーダーみたいにエネミーの現在地が視覚的に見えるというし」
「わたしの場合は、そのレーダータイプみたいですね」
智香子が発現した。
「自分を中心としてぐるっと円状に周辺を関知して、エネミーの所在地が点として見える感じです」
まだ〈察知〉を生やしたばかりでスキルが育っていないせいか、智香子がそのスキルによって関知できる範囲はせいぜい半径数十メートルといったところだった。
それだって、曲がり角などに遮られて見えないエネミーからの不意打ちを防ぐなど、それなりの効果はあるわけだが。
「つまり、この〈察知〉があるのとないのとでは、パーティの消耗が全然違ってくるわけでさ」
宇佐美先輩は、そう続けた。
「これこれでとても重要なスキルなんだよ、うん」
〈察知〉のスキルを生やした智香子に対して、「卑下する必要はない」と、そういいたいようだった。
だけど。
と、智香子は思う。
智香子が不満に思うのは、自分が〈察知〉を生やしたこと自体に、ではない。
立て続けに五つも、補助系と呼ばれるスキルを生やしていることに関してなのだが。
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