第45話 脱落者

 GWの連休が明けたある日、たまたま引率役として同じパーティになった青島凪という先輩に、例の事件による影響について訊ねてみた。

「多少は、脱落者?

 部活に来なくなった子が出ているみたいね」

 というのが、凪先輩の返答だった。

「ただ、この時期はだいたい、いつもこんなもんだから。

 必ずしもあのニュースのせいばかりではないんじゃないかな」

 そんなものなのかもな、と、智香子も思う。

 案外、探索部の活動というのは体力を使う。

 迷宮内にいる時は身体能力も強化されているのであまり感じないが、迷宮から出てしばらくするとがっくりと疲労がのしかかってくる。

 迷宮内にいる時は、普段よりも体が軽く、よく動くのが、かえってよくないのかも知れない。

 そのおかげで、普段よりも張り切ってしまう傾向があるのだ。

 いくら迷宮内では能力が強化されているとちいっても、ベースとなる人間の能力や体力までもが極端に強化されているわけではない。

 動けば疲れるし、疲れれば体力を削られる。

 場合によっては、体調を崩す。

 自分である程度加減を判断できない人は、その意味で探索者には向かないともいえた。

 入ったはいいものの、普段の活動が想像していた以上にきつかったので、部活に顔を出さなくなる。

 そういう傾向は、特に探索部に限定するまでもなく、それなりに存在するのではないか。

 特に一年生の、この時期。

 入学してから、一学期中までは。

 そして探索者としては、そうした脱落者に対しても寛容、というより、感心がないらしく、

「特になにもしない」

 という方針を採用しているらしかった。

「だって、下手をすると命がかかっているんだよ」

 凪先輩はなにげない口調でそういった。

「無理に連れて来て、やるようなもんじゃないし。

 それに、いやいややっても、楽しくないよ」

 智香子も、その意見には大いに頷きたいところだった。


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