第34話 アイテムの処分法

 ふと視線を逸らすと、先輩方が肯定の箸に列を作って、なにやら袋みたいなものをリレーして運んでいる。

「ちなみに、あれは?」

 黎が事情通であるという前提で、智香子は黎に訊ねてみた。

「地下倉庫に保管していた、少しは貴重なアイテムだね」

 黎は、よどみなく答えた。

「鉄とか銅とか、トン単位でもたいした値段にならないのは迷宮の地下においてあるコンテナに溜めておいて、満杯になったら業者の人に引き取りに来て貰う。

 少しは高く売れる物は、駐車場のコンテナに仮置きしているのもなんなので、もう少しセキュリティのしっかりしている校舎の地下に保管して、数ヶ月に一度、ああして搬出する」

「ああやって、リレーして、トラックかなにかがある場所まで運んで……って!

 多少は高く売れる、って、具体的にどれくらいの?」

「どれくらいの値段なのかなあ」

 黎は、首を傾げた。

「詳しくは知らないけど。

 コンテナの方は、それこそトンあたりいくらだけど。

 金とか銀、プラチナ、その他、迷宮でしか採取できないレアメタルとか物質なんかもあるし。

 よほど珍しい物だと、地下の倉庫に溜めるまでもなく、公社が引き取りに来るけど」

 説明を聞いていた智香子はあたまがクラクラしてきた。

 金、銀、プラチナ、レアメタル。

 そんな高価な物を、おそらくはナイロンかなにかも袋に詰めて、あんなに無造作に運んでいるという事実が、まず信じられない。

 しかも、リレーはなかなか途切れることがなく続いている。

 つまりは、搬出するべき物品がそれなりに大量にあるというわけで……。

「今、運んでいる物だけでもかなり金額になるんじゃない?」

「なるだろうね」

 智香子の疑問に、黎はあっさりと頷いた。

「なんに使っているのよ、そんな現金!」

「ほとんどは部費、じゃないかなあ。

 それと、探索者用の装備品を買うのに」

 思わず感情的になってしまう智香子と、淡々と疑問に答える黎。

「一年生の装備は、まだたいした物じゃないけど。

 でも、先輩方はかなり深い階層にまで入り込んでいるはずだから。

 それなりの装備を揃えないと、安全性に問題が出てくる。

 そして、探索者用の装備というのも、天井知らずなんだ。

 なにせ、現代科学を結集して開発した、最新技術のかたまりなんだから」

 さらに黎は、この松濤女子がそうした探索者用装備の開発会社とモニター契約をして、開発に協力しているという、そんな事情まで教えてくれる。

「何百人単位の探索者からいっぺんにデータを取れる場所ってほとんどないんで、その点でも松濤女子は便利みたいだね。

 開発会社にとっては」

 モニターとして協力する代わりに、できあがった製品も割引価格で一括購入をしているのだとか。

 松濤女子の探索部は、部活というのには実社会との接点が多すぎる気がした。

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