第33話 ドロップ・アイテムの扱い
順番待ちをしている間に暇だったので、智香子はこの配布会で配られる装備についての推測を、黎に語った。
「そんな感じだよねえ」
黎は、智香子の推測について、素直に賛同してくれる。
「そもそも、そんなにレアな物品、こんなに簡単に手渡してくれるとは思えないし」
智香子よりは事情に通じている黎によると、性能のいいドロップ・アイテムは、値段的なことをいえばそれこそ天井知らずの世界なのだという。
探索者の能力を、場合によっては何倍にも引き上げる装備も存在するため、ン千万から億円単位で取引されるような物も、それなりに存在するとか。
「そこまで高性能な物は、かえって市場にはほとんど出回らないけど」
そうした装備品は、探索者にとってはそれこそ自分の命を守る物になるわけで、高性能な物ほど、滅多なことでは手放すことがないのだ、という。
そうしたアイテムもより高性能な武器を入手するか、持ち主の探索者が引退するかすれば処分をされるわけだが、その場合でも知人の探索者に譲られる場合が多く、なかなか投機の対象にはなりにくい背景が存在する、ということだった。
「高価なドロップ・アイテムは、持って使っているだけなら単なる所持品なんだけど、なんらかの形で換金をすると、その時には課税対象となるから」
売り払った時に発生する金額によっては、かなり莫大な収入税を納めなければならなくなる。
そんな要因も、現役の探索者がなかなかドロップ・アイテムを手放さない理由になっている、そうだ。
「どっちにしろ常識的に考えて、ここでタダで配られているようなのは、そこまで曰く付きの物ではないと思うよ」
だよなあ、と、智香子も、心の中で、深く頷く。
それにしてもこの黎は、どうも探索者の事情に詳しすぎる気がるするのだが。
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