第31話 召集
「探索部に所属している生徒は、放課後、体操着に着替えて校庭に集合してください」
ある日、そんな校内放送があった。
昼休みに何度か、それに放課後になってからも何度か同じ趣旨の放送がなされている。
なにかな?
と、智香子は疑問に思う。
これまで探索部関係の連絡事項は、ほとんどネット上にあるSNS経由で伝えられている。
そもそも、探索部の全員を集めるとかなりの人数になるはずであり、その全員を集める必要がある用事など、早々に思いつかなかった。
智香子と同じクラスの部員たちも、納得がいかないような、かなり微妙な表情をしていた。
つまりは、智香子と同じように、この集合がなにを目的とした物か、想像ができないらしかった。
実際に行ってみればわかるか。
そんな風に思いながら、智香子はその日の放課後、校庭に向かった。
すでに大勢の、それこそ数百名という単位の生徒たちが集まっている。
松濤女子では、学年毎に学校指定のジャージの色を変えているので、なかなかカラフルなことになっていた。
たまに、陸上部とかの兼部組の姿もあちこちに見えて、こちらはその部特有のユニフォームを着用しているので、すぐに判別ができた。
中等部、高等部の両方を含めて、ほぼ全学年の生徒たちが集まっているのではないか。
ありゃあ。
と、智香子は思った。
これは、かなりの大事みたいだなあ。
顔見知りの先輩と会うことがあったら、それとなくこれからなにが起こるのか聞いてみようと、そうも思う。
しばらくして、朝礼台の上に、見覚えのある生徒が登ってきた。
あれは。
と、智香子は一度だけ会ったその先輩のことを思い出そうとした。
迷宮活動管理委員の、ええと……千景先輩、だったかな?
その迷宮活動管理委員とは、つまりは探索部の活動中にゲットできたドロップ・アイテムの回収と管理を行っている組織であると、智香子は理解している。
その他にも仕事をしているのかも知れないが、そちらの方の実態を、この時点の智香子は把握していない。
「これより倉庫の地下在庫整理をいたします!」
拡張器を構えて一度咳払いをした後、千景先輩はそんなことをいい出した。
「一年生を除く中等部の人は、管理委員の誘導に従って配置についてください。
一年生の人たちは、朝礼台の上に集まってください。
高等部の人たちは、いつものように動いてください」
なんだそれは。
途中で、智香子はずっこけそうになった。
高等部の生徒たちに対する指示だけ、妙にアバウトなのではないか。
いやそれだけ、上級生は細かいことをいわなくても、これからやるべきことを弁えている、ということなのだろうか。
そんなことを考えつつ、智香子は朝礼台の前へと移動をする。
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