第29話 部活のない放課後
その日の放課後は、部活がなかった。
仮にあったとしてしても、この筋肉痛ではまともに参加できたのかかなり怪しかったのだが、とにかくその日の放課後、智香子は疲れていたこともあり、そのまままっすぐに帰宅をする。
帰宅中の電車の中で、
「筋肉痛 治し方」
というキーワードで検索をしてみたが、すぐに治す方法というものはないようだ。
マッサージがいい、暖めて血行をよくした方がいい、その逆に冷やした方がいい、など、時に矛盾した内容が検索結果としてずらずらと表示される。
いずせにせよ、その真偽を判断する能力が智香子自身にない以上、あまり参考にはならなかった。
帰宅をした智香子はまず宿題を片付ける。
松濤女子は「割合にレベルが高い学校」だとされており、当然のように学校側も生徒たちの成績をあげることに熱心だった。
宿題や課題は毎日のようにどっさりと出たし、それ以外に放課後まで校内に残って自習をする生徒たちも少なくはない。
教師の方も、そうした自主的に居残った生徒たちには、かなり協力的だということだった。
まだ入学してから日が浅い智香子たち一年生の中からはまだそんなに出ていないが、学年があがるにつれてそうした居残り組は多くなっていくらしい。
この時点で、あまり勉強熱心でもなく進路について真剣に悩むこともない智香子は、ただ淡々と出された宿題を片付けるだけだった。
ただそれだけでも相応に時間を取られる作業であったが、そうした宿題をやらないで放置しておけば確実に普段の授業についていけなくなるので、黙々とやっていくしかない。
しばらく机に向かって宿題を片付け、一段落したら、かなりいい時間になっている。
自称社畜の父親は智香子が起きている時間に家にいることは滅多になく、母親の多紀も平日はかなり遅い時間に帰宅をする。
そのため、昔から夕食は智香子だけで摂ることが多かった。
幼い頃は母の多紀がレンジで暖めるだけの食事を用意していたものだが、今では智香子も簡単な料理が作れるようになっている。
しかしこの日は、例の筋肉痛で体調が万全ではなく、朝食に食べるはずだった食事もそのまま冷蔵庫の中に残っていたので、それを暖めて済ました。
それからゆっくりと時間をかけてお風呂に入り、いつもよりもかなり早い時間に寝てしまうことにする。
筋肉痛だけではなく、週末に行った部活の疲れが、まだ抜けきっていないような気がした。
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