第22話 変化
あれ?
と、智香子は違和感をおぼえた。
本日二度目、昨日から数えて三度目のバッタの間、でのことだ。
なんというか。
「体が、軽い?」
動きの、キレがいい……ような、気がする。
それに、視界が広くなっている。
視界の隅の方のバッタまで認識ができて、なおかつ、「いた!」と思った瞬間には手足が動いている。
智香子は「運動経験もろくにない子」ということで、軽くてリーチが長い、つまり素人でも扱いやすい武器であるグラスファイバー製の棒を貸し与えられていた。
午前中までは、周囲にバッタが密集しているのをいいことに、その棒を無闇に振り回している、といった態であったが、午後の今回は、ちゃんとバッタを視認した上で、そのバッタめがけて棒を振っている。
触れるように、なっている。
目が。
いや、目と体が、この作業に慣れてきてるのだ。
というのことが、如実に体感できた。
習うよりも慣れろ、か。
昨日、引率役の先輩がいっていた内容が、今になって実感できた。
エネミーであるバッタを倒し続けたことで、智香子自身の能力が全般に底上げされたことも大きいのだろう。
しかし、能力とは別に、心理的な余裕が、かなりできている気がする。
とにかく、意識をする前に、体が動くようになっているのだ。
体が、自分の手足が自在に、考えたとおりに動くということは、ここまで気持ちのいいことだったのか。
改めてそう、智香子は認識する。
スポーツをやっている人の感覚とうのは、こういうものなのかも知れないな、と、そう思い当たった。
ひゅんひゅんひゅん、と、風を切ってグラスファイバー製の棒が旋回するたびに、ばたばたとバッタが叩き落とされていく。
途中、よりバッタが密集している場所へと、棒の軌跡を変更する余裕すら、今の智香子には、ある。
より、効率的に、無駄のない動きで。
そのことを強く意識しながら、智香子は以前とは比べものにならないほど迅速に、大量のバッタを叩き落としていく。
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