第7話 戦いの後

 そんな感じで、新入生たちはむしろ、時間が経過すれば経過するほど元気に、快活になっていった。

 全長三十センチほどもある巨大な虫、という存在に対する嫌悪感さえ克服してしまえば、つまり一度手をつけてさえしまえば、これほど容易な仕事もない。

 取りあえず、なにがなんでもはじめてしまえと、そういった引率役の先輩がいったことは、全面的に正しかった。

 そう、認めないわけにはいかなかった。


 それでも、バッタの間自体がかなり広いこと、その中にひしめていたバッタの数が多すぎたため、すべてのバッタを倒すのには相応の時間を必要とした。

 午後一時過ぎに迷宮に入り、引率役の先輩のスキルによってそのままバッタの間の前まで全員で移動し、そして、そこのバッタを全滅させたのが、午後五時過ぎであった。

 その作業が終わると、がらんとしたバッタの間のすべてが見渡せるようになる。

 確かに、広い。

 体育館ほどではないが、教室がいくつか、多分六つとか八つくらい、すっぽりと入るような広さだった。

 その中にびっしりとひしめていたバッタをすべて倒した新入生たちは、流石に疲れたのか全身汗まみれになって、肩で息をしている。

 この作業が終わった時点で、新入生のほぼ全員が、いくつかのスキルを生やしていた。


「よーし。

 戦闘自体は、ここで終了」

 引率役の先輩が、そう宣言する。

「ちょっと時間がかかりすぎたが、初日としては上出来だ。

 あとは、ドロップしたアイテムを回収するだけだな。

 何人かは〈フクロ〉のスキルを生やしているはずだから、ドロップしたアイテムはすべてその中に入れて回収するように。

 バッタの死体はそのままにしておいて、問題はない」

 ここのバッタに限らず、迷宮内で発生した死体はすべて、床からしみ出すように出現するスライムというエネミーが消化して消していく。

 動物の死骸がそのまま放置されることがないという意味では、この迷宮という空間は、とても清潔で衛生的なのだった。


 それはともかく、引率役の先輩の宣言を聞いた新入生たちは、いっせいに、

「ええー!」

 と不満の声をあげた。

「これから、アイテムの回収までするんですか!」

 彼女たちはその時点で、疲労困憊だったのだ。

「他に誰がするんだ?」

 引率役の先輩は、新入生たちを甘やかさなかった。

「わたしらだって、わたしらの先輩たちだって、毎年同じようにやって来ているんだ。

 今年の新入生だけできないってことはないし、それに、アイテムの回収をして娑婆に帰るまでが迷宮の探索です!」

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