記録盤 No.009
【チャプター・046/049 底と果て】
──そして〈ブラン(ドン)・ベルゲン〉には大変申し訳無い事ではあるけれど、この辺りで〈ライリィ・ウォーカァ単体〉(思い出して頂くならば、『肩口程の真っ赤な髪/人相の悪い雀斑顔/男性と見紛う背丈の痩身』の、婦妻の“婦”である方だ)は観劇を取り止め、外出の準備を始めている──『十三周目』を一日で攻略する、その試み自体は面白いけれど、見栄えとしてはやはり冴えない。
もっと、こう、魅せ方と言うのがあるだろうに、〈
そんな時刻は午後の三時頃──昼近くに目覚めたら、〈エマ・ウォーカァ単体〉は出掛けており、(昨夜との対比で)寂しさなんかもちょっとは在ったが、二人共、当の昔に
〈白金の右脚〉が引退を余儀なくされてから、〈クロムウェルAFC〉は、まぁ何ともかんとも、ぱっとしない。表明を発表した其の脚で、彼氏が〈自殺志願者・支援/防止管理事務所〉なんて所に向かったらしき噂も在れば、とうとう贔屓替えも視野に入れるべきかとも考えたけれど、どうやら今回の試合には、期待の大型新人とやらが出張る予定であるらしい。
判断は、その彼氏だか彼女だかも分からない誰かの、活躍ぶりを観てからにしよう──そんな想いで、自宅の外へと出ようとした〈ライリィ・ウォーカァ単体〉だったが、(寝室にまで拡散/延長された)配送口に在った
既に現地へ赴いていた、/
そのまま自室へと戻って行けば、再び〈ペイル・ピット〉への観劇に赴く──なんて事は、まぁしないで、そのまま
(で──折角思い出して頂いたが、〈ライリィ&エマ・ウォーカァ婦妻〉/二人の出番は、此れにてお終いである。お手数でしたが、もう忘れて貰って結構だ)
そして──
──……で……どうするの此れ……私はどっちでも良い……嘘だけど……──
──……まだです……まだ……まだ大丈夫だと信じていますよ私は……──
──意固地に成るのも分かるけれど……引き際も肝心だよ姉さん達……──
そして〈
内容とは即ち、『計画』中断の是否である──上手く行っていないのか? いいや全然/全く以って。〈
誰一人として想定を脱しえない、優秀な駒、或いは〈虫〉である彼等の問題は、余りに上手く遣り過ぎている事だった──特定個人の仕業では無い。一つの行いに複数の反応、それが可及的速やかに浸透し、過負荷と成って襲い来る──この『計画』に込められた、四つの意味合いを思い出して頂くとすると、
1.〈
2.〈
3.(潜在的含む)〈
4.〈
此等の内、『3.』は特に順調であり、〈
──……分かりました……この辺りでそろそろ御暇しましょうか──
〈次母〉と〈末母〉に挟まれる格好で、〈長母〉は熟考し続けた──
──……どうなってるの……かちっと押せば済む話じゃないの……──
──しましたとも……ですが此れは……行けない……此れは……──
──……遣られたね……
各自各様に狼狽する〈三姉妹〉──『遣られた』と言うのは通達の一つ、/ジョシュ・グレイマンの〈ホワイト・スタッグ〉が、所属不明の人型戦闘飛翔機械に拠って、激闘の末、敢え無く〈
〈
〈アリス〉が────────〈
──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────そして見上げれば青い空/白い雲/輝ける太陽が天蓋に張り付き、移ろう事の無い風景を仰がせ、周囲をぐるりと眺めて見れば、白い砂の大地が拡がる──何処までも何処までも何処までも、だ。一度試して見た事があるけれど、どうやら此の地に“果て”は無く、望むのならば、/行うならば、何時までだって歩いて行ける──そうした所で何処へも行けず、延々白亜の平野が続くなら、そんな事をする様な意味も特に無く、試しも『一度』で充分だと言う所だ。
──だと言うのに、再び目指そうと思い至るのは、一体どう言う了見なのか? それは彼氏自身/〈
もしも他の〈階層〉であれば、〈
此処まで鬱々と思案した末、〈ブラン(ドン)・ベルゲン〉は不意に悟った。
自分はこの世界を憎んでいる──この〈
認識拡張の影響か──その事実に気付き、言語化してしまった其の瞬間、彼氏は吹き出し、笑ってしまった──散々言い繕って居たけれど、詰まる所に結論がそれでは、一体自分は何をしていたのか、と──もっと早くに見切りを付けて、〈
だから全ては有為であり──今、成している事だって、有為なのだ。
〈
──そうやって何時まで歩き続けたのか、思い出せない程まで歩んだ時──(振り向くと直ぐ近くには『泉』があって、距離としては全然離れて居ない事が分かる為に、絶対振り向いたりなんてして遣らない内に)──有り得ないものが其処には在った、/否、無かったと言う方が正しいだろう。
白い砂漠が途切れている──境界が引かれている様にくっきりと、ある地点から砂地では無く──何も、無い。
指を動かす。脚を動かす。何も『無い』が『在る』地点へ──自身も知らない、/『十三周目』の“奇跡”へ向かって──視界全体が、その様に染まる。
現実から虚構/虚構から現実へと、再び転換するとでも言う様に──
白、白、白、白──白が溢れ、世に満ちて──
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