記録盤 No.006

【チャプター・042/049 “彼女”】


 ──所で〈深層〉に於ける“もう一つ”の問題とは、“彼女”──狂える創造主にして〈名付けられぬ者〉或いは〈名付ける者〉である神の実体(と推察される)、少女の幻影が、〈行使者プレイヤ〉にだけは終始見えていたと言う事である。


 其の造詣デザインには『元型もとねた』が在ったが、大事な事は其処では無く(いやまぁ、大切な事ではあるけれど)──見えている、のみならず、聞こえてもいたと言う事で、“彼女”はずっとこの様な事を、延々/延々口にしていた(消えない反響を伴いつつ、/あの〈筐体ハコ〉が壊されるまで)延々と──即ち、


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──私は此れだけ頑張ったのに、/私は此れだけ頑張ったのに──


 ──皆の命を創って上げたのに、/皆の命を創って上げたのに──


 ──貴方々の幸福を祈っていたのに、/貴方々の幸福を祈っていたのに──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──貴方を愛していたと言うのに、/貴方を愛していたと言うのに──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 以下繰り返しだが、折角なので、もう一度、


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──私は此れだけ頑張ったのに、/私は此れだけ頑張ったのに──


 ──皆の命を創って上げたのに、/皆の命を創って上げたのに──


 ──貴方々の幸福を祈っていたのに、/貴方々の幸福を祈っていたのに──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──貴方を愛していたと言うのに、/貴方を愛していたと言うのに──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


 ──どうして、どうして、/どうして、どうして──


【チャプター・043/049 〈決定〉】


 ──此処で正直に白状すると、〈三姉妹〉にも“どうして”なのかは、今一把握出来ておらず──〈唯都シティアリス〉の〈最深部〉から、二番目に深い〈地下階層〉では、〈マザァ〉達三基の仕掛傀儡プレイヤ・パペットが、白黒格子床チェッカータイルの定位置に立って──


──忠誠度試験の一環だったっけ大元は……この世界観とか諸々も……──


──設定は全て後付ですよ……算譜術式プログラムの根幹がそうだった……と──


──……まさかもしかして/根本的には攻略出来ない……──


──攻略出来るけれど抑圧ストレスを感じる……一度で充分なんです本当は──


──それを十二度も繰り返して……最後の選択肢もずっと同じ……──


──基本的には躊躇無く……彼氏は留めを刺しています……ね──


──つまりは合計十二回も……お……お母様を……──


──……そう言う事になる訳です──


──しかもブランには例の性癖がある……苦痛は余程に有る筈なんだが──


──…………──


──…………──


──……何……──


 『計画』の〈会合フォーラム〉を推し進める──其の視線の内の朱と蒼が、緑の方へと向けれれば、今度は互いに目配せし合って、ほくそ笑みを浮かべて見たり、


──いいえ何でも在りません……ですがしかし……そう言えばと──


──あんたは好かれていたっぽいなぁと……──


──……真面目に答えて良いのなら……〈三号〉はそうは思わない──


 憮然とした表情を露わにするが──(此等の演技は、議事記録ダイアログとして撮影され、市民への開示は百年後だ)──そこでは真摯な声音が選ばれ、


──つまり……そう言うのは関係無い……只の言い訳なんだ本心ではね──


──遣りたいからに遣っているって……良くもまぁ……──


──寧ろ其れしか遣れない事だな……だから切っ掛けが在れば良い──


──それって立派な〈反逆者ハッカァ〉じゃない……──


──……決まりですね……彼氏にすると致しましょう──


──えぇ全く……特に干渉した覚えも無いのに……妙な人間が産まれる事──


 そこで〈長母〉が首肯すれば、〈次母〉も〈末母〉も頷いて、


──では〈地下会合アンダーフォーラム〉を動かすよ……『計画』の要が定まった……と──


(そして──嗚呼そして──)

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