記録盤 No.005
【チャプター・041/049 十二回目の神殺し】
──〈
〈フェリシア〉を一先ず小脇に──放って置くのも憚られたが、実際の権利は“彼女”に在って、何処かへ行くなら呼んでも来ない、それが〈猫〉と言うものだ──故に〈ブラン(ドン)・ベルゲン〉は身支度を済ませる──何時から着ていたのかも覚えていない、衣類を脱ぎ脱ぎ配送口へ、送る側として利用しつつ、簡易浴室での湯浴みを行う。
そうして着替えを済ませたならば、市民証に
「
と、声だけは聞こえた、気がしたが、
(これが〈猫〉との別れになったが、彼氏が気付くのは大分後だ)
久方ぶりでも変わらぬ太陽、/
無事に入場の許可を許され、
時刻は──大分早く来過ぎてしまい、午後の一時を過ぎた頃合い。
とは言え、食事も取って居なければ、向かう先は〈
それは大層有り難い話だがしかし、離れてしまえば意味は無い様で──
──そのまま仮眠へと移行するなら、目覚めた頃は五時半辺り。何と丁度良い
大地の下へと太陽が隠れれば、辺りには既に
通行人は程々であり、三分の一程は帰路だろうか──早めの夕飯を摂ってから、明日に備えて、もう寝るのか? それとも怠惰に夜更かしでもして、一日の終わりを先延ばしに──するのか/どうかなんて、どうでも良い。〈ブラン(ドン)・ベルゲン〉には遣る事がある。それは決して揺るがない。
そして──
そんな事を考えるよりもと──廊下を歩む〈ブラン(ドン)・ベルゲン〉──左右の扉に挟まれた廊下、その果てに辿り着く『No.14』は、何時か見覚えが合ったけれど、何時の事かは思い出せず、/ならば特に意味も無かろうと、〈
〈PALE PIT〉
〈PRESS ANY BUTTON〉
指を動かす──刹那、(どうでも良くは無い)現実が薄ぎ始める。
黒──白──光。そして光。
光が溢れ、世に満ちる──
──現実に則した時刻で言えば、『今夕六時』の頃合いだろうか? 大体にしか捉えていないが、〈サキシフラガ〉が立ち上がった時、『瞳』/【の数字】は既に相当で、しかも更に上がって来ている──良い傾向だ。帰宅を急いでいた市民達も、もしや此れを見る為にでは無かったか──とは、流石に穿ち過ぎだとしても、確かな励みには違いない。〈啓示板〉にて、大見得切ってしまった以上は、それを糧と邁進し──〈
一つは〈
これは全ての〈階層〉に存在して、上から下まで通じている──(物理的には、/空間的には滅茶苦茶な訳だが、超常的には、/
【今此処に、十二回目の神殺しを。人の限界をお見せします。】
その直ぐ後に入力した
──────流れ─────────流れ──────────流れ─────
─────堕ちて────────────────────────────
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
──そして見上げれば青い空/白い雲/輝ける太陽が天蓋に張り付き、移ろう事の無い風景を仰がせ、周囲をぐるりと眺めて見れば、白い砂の大地が拡がる──何処までも何処までも何処までも、だ。一度試して見た事があるけれど、どうやら此の地に“果て”は無く、望むのならば、/行うならば、何時までだって歩いて行ける──そうした所で何処へも行けず、延々白亜の平野が続くなら、そんな事をする様な意味も特に無く、試しも『一度』で充分だと言う所だ。
そう、此処には砂──砂、砂、砂、砂、砂しか無い。
何故なら此処こそ始まりの地、全てが造られた場所なのだから──
『〈
〈サキシフラガ〉も身を翻し、それを合図と刃を放って──
──実の所に難易度としては、そこまで高いものでも無い。
(視覚的には表示されない)一定数値の【
──ならば此れで問題は無いのか、と言ったら、そんな事は全く無い。
この〈深層〉に於いての戦いには、もう一つ、/全く別種の障害があった──最終決戦に対しての緊張感? ここぞと言う所でのしくじりに拠る、【批判点】の大量獲得? それも在る、/在るには在るが、また違うものだ。
その“もう一つ”を説明する事はしかし〈
そして──
そして〈神子〉の似姿が崩れ去り、静寂が砂漠を直走った──次の瞬間、
〈LIFE IS ROUNDED WITH A SLEEP.〉
〈
ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、と──遠く彼方、/壁の向こうにて、歯車の蠢く音を感じる。〈記憶の石碑〉も、その代用も、何もかも出現する事は無いのだけれど、自動的に記録は行われる──この段階にて、仮に不備が起ころうとも、狂える創造主を手に掛けた、そんな事実は変わらなくて──(大元の機械に何かが起これば、/〈
それは、この十二回目の偉業に於いても、やはり何も──何も変わる事は無い。期待していた訳でも無いが、それでも想う所は在る──だからこそ、と言う訳でも無いのだけれど、似姿を倒した〈サキシフラガ〉に、唯一許された行為をするべく、〈ブラン(ドン)・ベルゲン〉は指を動かす──砂漠の中心、とは即ち、〈ペイル・ピット〉の中枢という事になるだろうか? 何時の間にやら、其処には『泉』が出来ており、白く輝く水面の中央には、虚ろなる影が浮かんでいる──靄の様にはっきりしない、朧な姿を良く捉えるべく、水を分け入り近付けば、それは俄に蠢いて、箱の様にと凝り固まった──接近して始めて分かる事としては、その〈
時間の制限は基本的に無い──
だから、そう──先の〈
深呼吸を一度、二度──操作事故だけはしない様に──
指を弾いて〈決定〉するのは、〈サキシフラガ〉の攻撃だった。九つの似姿、其の尽くを討ち取った得物=〈死滅の短剣〉×二本が、青褪めた軌跡を浮かべて〈
白く、/白く、暗転する──声音に合わせ、世界が移ろい──
──記録は然と行われた。
気付けば其処は〈第一層〉/騙られし人の為の都であり、煉瓦と金属の
──其の意味する所は理解しているけれど、彼氏は余韻に浸っていた。
俺は遣った、俺は遣った、俺は遣った、と──自分自身へと言い聞かせつつ。
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