ep12-3
「あぁ、久しぶりのこの体……。それに、感じますわ。あの勇者王の力を受け継いでいるのですね。」
ツガルはゆっくりと深呼吸をする。
魔王と対峙しているというのに、どこか涼しげな表情だ。
「魔皇帝様のご命令だ。貴様ら全員この場で処刑する!」
ヴォルティーチェが手を突き出すと同時に、手に持っていた小さな円盤から光の矢が放たれた。
ツガルは軽く首を横に倒しただけでそれをかわす。光速で飛ぶ攻撃だ、目視するより先に軌道を読んで避けていた。
「魔王の力、そんなものですか?」
ツガルが挑発するとヴォルティーチェは無言で両手を横に突き出す。伸ばした腕の袖の先から小さな円盤状の物が飛び出した。
ふちが白黒で塗られた賭博用のチップだ。片面に念動力に感応する魔力回路が彫り込まれている。
ルキーニがトランプで使用していた様な、南海諸島の魔王が得意とする念動力だ。
しかしさすがに魔王とあってはその魔力もけた違いの様だ。ゆうに200を超えるチップがそれぞれ別の動きで空中に並んでいく。
そして、空中に並んだチップが一斉にその裏面をツガルに向ける。そのチップのひとつひとつに、光の矢の魔力回路が彫り込まれていた。
「蒸発しろ、勇者!!」
ザアァァァァァ!
ツガルを取り囲んだチップから豪雨の様に光の矢が放たれる。
しかしツガルは動じない。
襲い来るまぶしい光の中で、ニヤリと笑った。
ボムッ!
ツガルに向かって収束した光が爆ぜた。
唖然として見守るマミヤの目の前には、光線の熱で空気が揺らぐ中に平然と立つツガルの姿があった。
「あーあ、ソニアったら。この程度に手助けは不要ですのに」
ツガルは剣の腹を肩に預けて首だけ後ろを振り向く。
背中から天使の羽根の様な粒子を放つソニアが悪戯っぽく笑っていた。
「へへっ、いいじゃねえか。久しぶりの女の体でよ、ムラムラしてしょうがねえんだ」
清楚なお姫様が可憐な声色で下品な事をつぶやく。
ソニアの指先には小さな魔力回路が形成されていた。
「何だ、何をした貴様ら!!」
激高したヴォルティーチェが再びチップを操り、全方位からツガルに向かって光の矢を放つ。
しかし光の矢はツガルの周囲2メートルほどの所であらぬ方向へとはじけ飛んでいた。
ソニアが張った重力操作の魔力回路によるバリアだ。極薄の重力膜が光の矢を急角度に屈折させている。
「あー、こんなにえっちな妄想を自重せずにいられるなんて、最高の気分だぜ」
ソニアの背中が荒々しく光り輝く。その片手は胸に、片手はスカートの中に収まっていく。
「もう、はしたないですわね……後でお仕置きですよ。ソニア」
「はゥン!」
ツガルの言葉にソニアがビクンと仰け反る。
この二人の相性は抜群の様だった。
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