ep11-3
「……一体これは何ですの?」
受像機からは舞いあがった男の演説が途切れることなく垂れ流されている。
消えたとされている大魔王メイルシュトロームが例の魔皇帝ベルモントに従っているという事が一体何を意味するのか、ソニアは思案した。
他の魔王たちの事も気になる。犬の体と入れ替わった魔王ヴォルティーチェや、昨日まで居城にいたはずの魔王ガルフストリームまでも魔皇帝ベルモントに従っている。
「何者なのでしょう、このベルモントという者は……」
「国境で我々を襲った輩に似ているな。覚えていませんか、ソニア姫。お逃げになる貴女がたを私が助けた時の」
「あぁ、そう言えばこんな事もありましたわね」
ソニアは思い出す。あの時も確か、黒いローブの男たちに襲われたのだ。
そして、更に前……ソニアとツガルが初めて出会った時のこと。姫君ソニアを山奥の塔の上に誘拐した人物もまた、同じ黒いローブを纏っていた。
あの日ソニアとツガルを入れ替えた魔力回路の事と、目の前に流れている映像の出来事が結びつき、夜空に星座を描く様に全体像を浮かび上がらせて来る。
「……まさか」
「魔導軍によるクーデターだな」
マミヤの分析にソニアは頷く。
「体を入れ替える魔力回路で私とツガルを入れ替えた男も、あの魔導軍のローブを着ていたのです」
「なるほどな……。高い魔力を持っていた魔王の娘ソニアが狙われた様に、魔王たちも体を狙われ奪われたのだろう」
「では、あの映像に出ていた魔王たちは既に入れ替わった別人ということでしょうか」
「魔王級の魔力を持つ者たちと体を入れ替えた部下を引き連れて、最強の魔導軍を作る……力に溺れた者の考えそうな事だ」
「全ての魔王を従えて、国家転覆どころか全ての魔王国を掌握するつもりなのですわね」
「それで、魔皇帝に魔帝国か……。バカバカしい」
マミヤは受像機を一瞥し溜め息をつく。
映像は再び魔導軍の紋章に切り替わり、また同じ映像が流れ始める。
「おい、ルキーニ! 俺の体を取り戻しに行くぞ!」
「わわっ、落ち着いてよモツァレラ!」
小犬がルキーニの腕の中で暴れ出す。ルキーニは両手でモツァレラを持ちあげて、空中で好き勝手に暴れさせる。
「さすがに魔王が5人も揃ってる所に乗り込むのは勇気いるよねー」
普段は能天気なルキーニでさえも戦力差を思い知らされていた。魔王5人を自在に操れる程の勢力に逆らえる者などいないだろう。
皆が意気消沈する中、荒々しい音を立てて館の門が叩かれた。
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