ep10-5

「ソニア、大丈夫か?」

「はふ……はひ……」

 ガルフストリームにくすぐられて疲れ果てたソニアをツガルが気遣う。

 ガルフストリームは再び何かメモをとりながら、2人に服を返した。

「さて、2人とも。とりあえず今日の検査の結果を私なりに分析してみるから、また明日おいでなさい。明日は元に戻す方法があるか、いくつか試したい事があるんですよ。ふふふ……しばらく通ってもらわないといけませんねぇ」

 ガルフストリームの怪しげな笑みに不安を感じながらも、促された通りに2人は服を着替える。

「……何か方法はあるのでしょうか?」

 ソニアが何気なく呟いた独り言に、ガルフストリームは耳聡く応える。

「元に戻す、とは違うけれど……性別を逆転させることは出来るね」

「「え!?」」

 ガルフストリームの言葉に鋭く反応したのはマミヤとルキーニだ。

「それって、ボクも女の子になれるってこと!?」

「わ、私も男になれるのだろうか?」

 マミヤとルキーニにぐいぐいと迫られたガルフストリームは、

「まぁまぁ君たち。落ち着きたまえ」

 と2人を押し返す。

「まだ人体実験をしていないのだけどね、性別を逆転させる薬はある……のだが……」

 ガルフストリームは迫る2人に左右から挟まれて苦しそうだ。

「なにぶん、試していない物を処方する訳には……」

「ボクが実験体になるよ!」

「私もだ! 大切なツガルとソニアの為ならばこの体を差す出すことも本望!」

 2人のただならぬ熱意にガルフストリームは引きつった笑いを浮かべる。

「貴方たち、いち早く自分が試したいだけじゃありませんか?」

 呆れるソニアに目もくれず、マミヤとルキーニは目を輝かせてガルフストリームに迫る。今にも押し倒しかねない勢いだ。

「ボク、女の子になったら魔王ヴォルティーチェの子どもを52人産むんだ! だから、ねぇ~」

「わ、私だって男になったらお兄様を娶るぞ!」

「わかった、わかったから落ち着いてくれ~っ!」

 ついに根負けしたガルフストリームは白濁液が入った瓶を2本、近くの棚から取り出した。

「いいかい、これが……」

「いただきますっ!」

「ま、まて! まだ説明が!」

 一体どれほどの情熱をマミヤは秘めていたのか、彼女はガルフストリームから瓶を奪い取った。

「んくっ、んくっ、んくっ、ぷは」

 腰に手を当て、謎の白い液体を飲み干すマミヤ。

「うぇ、マズ……いや、良薬は口に苦しと我が国の古い言葉にもある! 苦くて、粘り気がひどくて、飲み込んだ後も口にイガイガと残る……なんと良薬であろうことよ!」

 マミヤは誇らしげに瓶を掲げる。

「わーお、全部飲んでしまったのかい?」

 露骨に慌てるガルフストリーム。

 マミヤは涼しげな顔で空き瓶をテーブルの上に置いた。

「それで、これはどんな薬なので……うっ……」

 マミヤは改めてガルフストリームに説明を求めようとしたところで、自らの股間を押さえて呻いた。

 腰を中心に痙攣しつつ、若干前屈みで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る